390名の思いをつなぐ「平和新聞」~新聞づくりを通して学ぶ平和学習 

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 広島国際学院高等学校では、今年2月24日に勃発した「ウクライナ戦争」について、戦争の経緯や平和活動に向けた取り組みを2年生の生徒たちに考えさせるため、「平和新聞」の作成をテーマとした学習活動を実施した。

 現在、私たちの周りでは、歴史教科書さながらの国際紛争が多発している。特に、映像や文字情報を通してリアルタイムに入ってくるウクライナ戦争の惨劇は、戦争を経験したことのない生徒達に、歴史でのみ学ぶ「他人事」の戦争から、私たちと同じ時間に、地球上で傷つき、命が失われている現実がある「自分ごと」として実感する学びを作り出している。

 戦争をなくし、平和な世の中を築くため、私たち1人ひとりが何をすべきか。新聞づくりに向けて、ウクライナに関する情報を学ぶ「事前学習」、第二次大戦後のウクライナを舞台とした映画『ひまわり』の鑑賞、学んだことを通して、自らの意見を発信する100文字程度の平和メッセージを2学年390名で作成した。

 次に、各自で作成したメッセージを生徒同士で共有し、その想いをつなげるため、クラスで「広島人、KOKUSAI人として世界に平和を発信」をテーマに、「クラス平和メッセージ」として各クラスに配属された平和学習委員が集約した。

 さらにまとめられたメッセージは最終的に、平和学習委員より希望で選定した「編纂委員」の下、一つの平和新聞としてまとめる活動につなげた。学校(教師)からの学びの発信を生徒間で意見を紡ぎ出し、さらに密度の濃いメッセージに収れんしていく。地道な作業ではあったが、全員の想いを残すための活動として取り組んだ。

 編纂を行っていく際、編纂委員には、各クラスの平和メッセージに「見出し」をつけてもらう作業を依頼した。平和メッセージを作成する側ではなく、読み手側になった時、各クラスの想いをどのようにくみ取るか......社会にこの新聞を発信した時の読者の反響を深く考えながら、新聞に磨きをかけることに努めた。

 完成した新聞は、A3判の用紙で三枚分(写真はA2判に拡大)。総文字数7000字以上。3か月程度かけて試行錯誤した390名の想いをつないだ「平和新聞」は9月3日に完成した。

 編纂を行った平和学習委員の高橋君、山中君、中村君は、2学年全体の想いを受け取り、まとめることの難しさ、平和を学び発信することの奥深さを実感することができ「大変勉強になった」と口をそろえて感想を述べてくれた。

 本校の平和新聞は、中国新聞社主催『みんなの新聞コンクール』に出品。本校生徒が社会とのつながりをもつきっかけを作っていく。今後も、新聞づくりを通して、平和に関する学びと発信し続ける想いを大切にしていきたい。

為重 慎一(広島国際学院中学校・高等学校教諭/日本新聞協会NIEアドバイザー)(2022年9月7日)