4年ぶりの開催で活発な討議 東海ブロック会議

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▼雨模様の中、熱気に溢れた会場

 コロナ禍で2018年以来実施できなかった東海ブロック会議。今年6月18日、久しぶりの対面での実施となった(写真)。場所は三重県の津市。当日は雨模様だったが、会議の場は活気に溢れていた。話し合いはオンラインだと便利だが、対面しての話し合いはそれにも増して良い。そんな感想を持ったのは私だけではなかったのだろう。熱気に溢れていたのは、「対面で話し合いたい」という欲求の表れだったに違いない。

 三重県NIE推進協議会会長による挨拶の後、静岡、愛知、岐阜、三重の順番で推進協議会の取り組みと課題・展望を報告しあった。「いっしょに読もう!新聞コンクール」などイベントへの参加の促し、実践指定校への支援、アドバイザーとの連携、ICTとの併用などによりNIEが活性化しつつある様子が報告された。中には、子ども時代にNIEの授業を受けた世代が教師となり、実践を先導している例も報告され、NIEの明るい未来を感じた。

 一方、課題として「アドバイザーを生かしきれていない」「NIEの自主的グループがあっても停滞中」「ベテランの実践者が減る中での後継者の育成の難しさ」「限られた予算とスタッフで、NIEを拡大することの困難さ」などが報告された。後継者の育成問題は、私も日々実感している点だったのでうなずけた。私の場合は、周囲の教師に声をかけ、実践を紹介したり授業を見せたりしながらNIEの価値や意義を伝えることで若手を取り込んでいるが、そうした地道な努力が現場でも欠かせないと思った。

基調提言およびグループでの意見交換

 続いて、関口NIEコーディネーターによる基調提案があった。テーマは「社会に開かれた教育課程とNIE」。「社会に開かれた教育課程」を「よりよい社会を創ることを目標として、地域の人々と連携・協働して、未来を生き抜く子どもの資質・能力を育む教育課程」と定義し、「日常生活や地域社会、時事とつなげる学習(例:新聞づくり、社会への発信など)」「地域の人材を活用した学習(例:地域の達人をゲスト・ティーチャーとして招くなど)」「教科横断的で、現代的な諸課題を内容とする学習(例:総合的な学習、道徳、行事などでカリキュラムに入れるなど)」を目指す重要性を話された。図が用意され、視覚的に説明されたので、納得できる内容ばかりだった。

 基調提案を受けて二つのグループに分かれて話し合いを持った。テーマは「社会に開かれた教育課程とNIE」だが、ざっくばらんにNIEをテーマに自分の体験などを話すのもあり。私のグループでまず話題になったのは「自分に関係のある地方の記事を生徒に実感させるにはどうしたらよいか」だった。静岡の先生が教室で、リニア中央新幹線の南アルプストンネル工事による大井川の水資源減少問題についての記事を取り上げて紹介したのだが、自分たちに関わる問題であるにもかかわらず、反応が薄かったという。地方記事を取り上げるのは学校と社会を繋ぐ意味でも、地域振興の意味でも重要な活動である。これを解決する策として「主権者教育と絡めて参議院選の記事を扱うのはどうか」という案が出た。各候補者のマニュフェストを分析したり、模擬投票を実施したりすれば、生徒も切実感をもって受け入れるのではないかという理由からだった。これは岐阜高校でも以前自民党の総裁選で同じような実践を行っているので、納得できる案だった。参議院選で言えば、記事をスクラップしたり、候補者のエピソードを紹介したりすることで、より切実感を持たせることができるのでは、という意見も出た。

待たれる実践者同士のネットワークづくり

 地域の記事から「地域創生」というキーワードも出た。「地域」がテーマだと、大手新聞に比べてオリジナリティがあるのは地方の記事であり、地方新聞である。「地方紙こそこれからのNIEで取り上げたい。そこから『地方創生』ができるのでは」との意見である。地方創生とは「少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくことを目指すもの」(北陸財務局ホームページより)である。この提案に対しては「大学と地方創生を結びつけるために大学生が紙面作りに参加する活動」が紹介された。大学生が記者となり、広報誌に記事を書いたというもので、大学生の満足感、達成感は大きかったそうだ。これは大学生だけでなく小中高校生でも有効であるので、「地方創生を目的とした紙面参加」が今後できるかもしれないと私も感じた。

 話し合いの中で、「孤軍奮闘しながらNIEに取り組んでいる」という中学校の先生が実体験を紹介された。生徒に力を身に付けさせたいと思い、新聞記事を使用したワークシートを自作したり、「切り抜き作品コンクール」を紹介したりするが、生徒の反応が今一つだという。根底には「成績に関わらない学習はしたくない」という考え方があるらしく、乗ってこないらしい。グループの中では「『やらされている感』ではなく、『やってよかった』感が持てるようにほめて伸ばしてはどうか」「全員は無理でもきちんとやる生徒はいるはずなので、地道に続けていくことが大事」という意見が出た。このように個々でNIEに取り組む先生方は岐阜県にもいるので、そういう先生方とネットワークで繋がれば、互いに悩みや苦労を共有し、解決できるのではないかと感じた。これは岐阜県の課題の一つでもあり、数年前から提案してきたが、現実には簡単ではない。しかし、優れた実践者が各地域に存在するのは確かなので、アドバイザーだけでなく、実践者も含めたネットワークの構築が待たれると思う。

組織でしっかりカリキュラム・マネジメントを

 基調提案にある「社会に開かれた教育課程」についても意見が出た。例えば、総合的な学習のカリキュラムにNIEを組み込むこと。こうすれば、地域との連携が図れるし、そこから「地方再生」の見通しも立つからだ。実際、私の勤務校では1年生が「地域に学ぶ」をテーマに、新聞を作成したり、インターネットや新聞を使った調べ学習を取り入れたりしている。

 「データに基づいたカリキュラム作り」の話も出た。例えば「全国学力・学習状況調査」(文部科学省)のデータを基にしたカリキュラム・マネジメント。あるいは、関口先生が提案されている「NIEに関わるデータ」に基づいたカリキュラム・マネジメント。データに基づいて作成されたカリキュラムは、客観的で、実践的である。さらに、子どもたちの実態に応じているので、意識から遊離することなく実践が可能である。

 関口NIEコーディネーターはカリキュラム作成について「担当者が個別に行うのではなく、学校として組織的に行うことが重要」とおっしゃったが、まさにその通りだと思った。実際、大抵の学校は担当者が来年度のカリキュラムを作成しているので、それを学校全体で作成すれば、個々の教員も自覚を持ってカリキュラムを実践できるのでは、と思う。

ICT時代に有効な記事データベースの活用

 最後に、話題はICTの活用にも及んだ。中でも早急に実現したいのは「安価な価格での記事データベースの活用」である。現在、各新聞社は過去の記事を検索できるシステムを構築しているが、有料であり、学校単位で活用するのは難しい。中には自腹を切っている先生もおられるそうだが、個々の対応では限界がある。

 1人1台のタブレット配布が実現され、子ども達は自分で情報を取り入れることが可能である。「新聞を使用する場合、紙媒体か、それともデータベースか」という議論があるが、これもケース・バイ・ケースだと私は思う。最近のニュースなら紙媒体で仲間と議論しながら学習するのが有効だが、過去の記事も欲しい場合はデータ上で検索した方が早い。紙の新聞を準備できない場合も、データベースで調べることができれば有効に違いない。ただし、新聞社の記事データベースは有料で、料金が高めの設定なので自治体単位、学校単位で契約をしない限りは難しい。「ICTとNIE」を考えるとき、「記事データベースのサービスを自治体として契約する」ことがどうしても必要ではないか。

 以上は私の属したグループの話し合いだが、もう一つのグループからは、「NIEは特別なものではなく、日常的なものである。実践のためには、子ども達に学習に適した記事を見つけられる力を育成することだ」「授業参観などでNIEの授業を行うなどして地域に向けてNIEをもっと発信することが大事」「SDGsの機運が高まっている中だからこそNIEの重要性が高まっている」「NIEは初心者にはハードルが高いので、新聞の読み方から始めるのがよいのでは」など、NIEの重要性や具体的な提案がされていた。

東海4県の交流で実感したこと

 交流後は関口NIEコーディネーターがまとめをされた。基調提案だけでなく、2つのグループの要点を画用紙にまとめ、それを提示しながら話をされた。互いのグループの話し合いの内容に違いはあったが、「子ども達の成長のためには社会で生きる力を身に付けさせることが大事。その手段としてNIEは有効である」という点では一致していることを再確認できた。

 静岡県、愛知県、岐阜県、三重県のアドバイザーや推進協議会事務局長が集った今回の会議。久しぶりの対面での会議だったが、「遠くまで足を伸ばして良かった」と感じた。何より4県で交流して取り組み内容や課題・展望には大きな違いがあるが、継続して取り組む重要さを実感できたこと、そして、NIEの実践が子どもたちにとって有効であることを再確認できたことは何物にも代えがたいと感じた。

 今年度は「第6次図書館整備5か年計画」の初年度に当り、これから図書館の新聞が充実する兆しがある。我が校にも一紙、購読する新聞が4月から増えた。各教科書にもNIEが位置づけられつつある。NIEがより多くの先生方に受け入れられ、特に若手の実践者が増えることを祈りつつ、報告を終わりたい。

細江 隆一(川辺町立川辺中学校教諭/日本新聞協会NIEアドバイザー)(2022年7月25日)