「社会の出来事に共感できる子を」関東甲信越静ブロック会議

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 小学校の現場で約20年、2018年度から実践指定校としてNIEに関わったことがきっかけで現在NIEアドバイザーを務めており、久しぶりの対面交流を通して、実践の幅を広げたいという思いで新聞協会主催の標記会議に参加した。
 各都県の取り組みと課題についての報告後、新聞協会の関口修司NIEコーディネーターの基調提言(社会に開かれた教育課程とNIE )を受けて行われたグループ討議では、「社会とつながっていく子どもたちの育成について」が話題の中心となった。
 「今、社会で起こっていることは、自らつながろうとしていかないと知ることができない。そうしていかないと、今、身の回りで起きていることに共感できないし、共感できない人が増えていくことは、結果的に社会の分断をまねいてしまうのではないか」。そのような危機感を共有したうえで、ではNIEとして何ができるのか。グループのみなさんと考えを深めていった。

 確かな結論にまでは至らなかったが、行きついたことは、新聞記事を読み→考え→書くというサイクルの重要性である。ある高校では、この学びのサイクルを日々繰り返し、デジタル情報も含めたあらゆる情報を比較しながら読み込むうちに、高校生たちが、「新聞情報の信ぴょう性や内容の奥深さ、新聞記事がその時、その場の空気感が伝わる情報媒体であること」に自ら気づいていったという実践エピソードが心に残った。
 高校段階におけるこのサイクルの日常化が、将来にわたって、自ら社会とつながっていく人間を育てるのではないか――ということを確認し合うことができ、充実した討議となった。

 「では、小学校段階では、社会とつながる素地を養うために何ができるのか?」。討議をきっかけに改めて、自分自身の実践を整理してみた。
 小学校段階でのNIEで私が大切にしているのは、「新聞で様々なこととつながる楽しさ・よろこび」である。日々発刊され、幅広いジャンルを網羅した一枚一枚の記事や写真は素材の宝であり、それらが既習事項や経験・体験とつながっていく瞬間の子どもたちのよろこびの表情を見ることは、私にとってもよろこびの瞬間である。そして、「つながる楽しさ・よろこび」が結果として、社会とつながり将来にわたり、社会で起こることに対して『自分で考え行動できる力』になっていくのではないか?」と考えている。
 「今日は、この一枚の記事を授業でどうしかけようか?」――「単元や授業の始めに驚きの事実をして提示するか?」「授業の流れの中で、関連記事を提示し、子どもの思考を揺さぶったり、切り返したりしようか?」「学習のまとめの段階で、記事とつなげ整理していこうか?」等――。そのようなことを考えながら今日も新聞を眺めている。

 久しぶりの対面交流で、社会とつながっていくための新聞の教育的効果について、多くの方々と議論することができ、自身の考えをアップデートできた。これからも一本の新聞記事を子どもたちとともに読み→考え→書くというサイクルを通して、社会と積極的につながっていきたい。

小川 訓靖(静岡市立清水三保第二小学校教諭/日本新聞協会NIEアドバイザー) (2022年6月24日)