中学生が小学生に教える「ヒロシマ」  兵庫・愛徳学園小・中学校

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平和の大切さを伝える生徒たち=愛徳学
園(同学園提供)

新聞記事を調べる生徒たち=同上

 NIE活動の一環として、中学3年生が「ヒロシマ」をテーマに作った新聞を通し、小学6年生に平和の大切さを伝える授業が1月21日、愛徳学園小・中学校(神戸市垂水区)であった。  

 同学園の教諭でつくる「NIE研究会」の企画。同研究会は小学校から高校まで、NIEによる学びを継続・発展させようと活動している。

 中学3年生は昨年10月、被爆76年となった広島への修学旅行で、当時の惨状や記憶を継承する語り部を取材。新聞記事で、原爆投下直後に降った「黒い雨」を巡る訴訟についても学び、グループごとに新聞を作った。

 授業は中学3年生約30人が参加。コロナ対策のため、別の教室にいる小学6年生にオンラインで話しかける形で行った。完成した新聞を紹介しながら、「戦争の悲惨さを語り継ぐのが人間の責任」「『黒い雨訴訟』を知り、被爆者の苦しみは今も続いていると分かった」などと述べた。講師を務めた姫野さくらさんは「戦争を体験した人たちの思いを、小学生に分かりやすい文章にするのは難しかった」、足立理羽さんは「小学生に伝えるには、原爆の恐ろしさをより深く知っていないといけないことに気づいた」と話した。

 小学6年生は17人が参加した。小野綾芭(あやは)さんは「今日の授業のように、戦争の悲劇をさまざまな方法で学び、未来に平和をつなぎたい」、小嶋悠那さんは「戦争がもう二度と起きてほしくないという思いになった」と話していた。

■生徒たちが「ヒロシマ」をテーマに作った新聞はこちら

■児童・生徒の感想はこちら

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<廣畑彰久・愛徳学園中・高校教諭>

 愛徳学園中・高等学校は、2020年度よりNIE実践指定校として活動を行い、21年度に小中高合同のNIE研究会を発足しました。その最初の取り組みが、今回の小・中による連携授業です。 本校の中学3年生は、修学旅行で広島を訪れます。21年度も事前学習で被爆された方からお話を聞くことができたのですが、被爆者の高齢化が進み、記憶の継承が課題とされています。生徒には、平和学習の受け手に終わらず、主体的に発信する側の立場になってもらうことを狙いとしました。

 生徒の感想には「修学旅行を終えて時間がたち、忘れかけていた平和に対する関心が高まった」という意見が多く見られました。また、「小学生相手にわかりやすく伝えることに苦戦した」という意見も多く、コンテンツはもちろん、言葉選びやレイアウトに至るまで、彼女たちなりに工夫した跡がうかがえます。

 反省点は、準備の時間が十分でなかったこと、感染症対策や欠席者の対応でスムーズにいかなかったことです。平和学習の面では、修学旅行の体験から少し時間を空けて取り組むことで、失われつつあった生徒たちの関心を取り戻せました。表現について学習するという面では、年下(小学6年生)を聞き手とすることで、生徒の意識が高まったことに大きな手応えを感じています。



<彦野周子・愛徳学園小学校教諭>

  愛徳学園小学校と中・高等学校は同じ敷地内に隣接しているため、普段からさまざまな場面で交流が盛んです。

 本校のNIE研究会はそのような環境の下、中・高等学校が2020年度からNIE実践指定校になったことをきっかけに発足しました。

 今回、中学3年生は公民科、小学6年生は社会科の授業の一環として「連携平和学習」を行いました。

 小学校社会科の大きな目標は「平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を養う」ことです。そのため歴史的事象の意味を多角的に考え、深めることが必要となってきます。

 その手立てとして、戦争に関する複数の新聞記事を読み解き、内容や感想を共有することが効果的な学習方法だと考えました。しかし、第2次世界大戦について初めて学ぶことの多い小学生だけでは記事の内容を正しくとらえ、考えを深めるまで至るには難しい面がありました。 そこで、中学生との連携学習という形をとりました。小学生は教科書や資料だけでは知り得なかったことを知り、中学生から「戦争を語り継ぐ」意味や大切さを伝えてもらうことによって、過去の戦争から学び、平和を守り、つくっていくとはどういうことなのか考える機会になったと思います。


兵庫県NIE推進協議会から

三好正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(2022年2月16日)