第12回いっしょに読もう!新聞コンクール 最優秀賞(中学生部門)尾崎柚果さんへの記者からのメッセージ

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「生きやすい」社会を目指して

家具販売大手ニトリホールディングズの似鳥昭雄会長が、実は発達障害だったという。苦手をかかえながら、なぜ成功できたのか。その理由を知りたくて、インタビューを記事にまとめた。

似鳥さんの子ども時代は、漢字は書けないし、成績はビリ、先生の話は1分も聞けず、いじめられっこだったという。それでも、「人のやらないことをやろう」と考えて、家具店を起こし、大きな目標を立てて「ニトリ」を発展させていった。障害のおかげで、人が考えつかないことができる。だから「発達障害でよかった」という。

成功の秘訣をきくなかで、「自分の得意なことを早くみつけること。長所が見つかると、短所が隠れちゃうんだよね」と語ってくれた。

似鳥さんは経済人なので、普段は経済のニュースのなかで紹介されることが多い人。でも、似鳥さんの言葉を、自分と同じ子育て世代の読者にも伝えたいと思い、あえて「生活面」に記事を載せた。今回、その記事が、中学2年生の心にも届き、考えをめぐらせ、感想を寄せてくれたことを知り、驚くとともに、とてもうれしい気持ちになった。

尾崎さんがたどり着いた答えに希望

盛岡市立見前中学校2年の尾崎柚香さんは、姉に発達障害があり、できることとできないことが「自分と違う」と感じていたという。それまでは、あまり深く考えることはなかったけれど、記事を読み、家族の意見を聞くなかで、「障害があるから違う」のではなくて、「みんな違う」ことに気づいたという。それだけでなく、姉の得意なことや自分の苦手なことに思いを巡らせ、「違うからこそ助け合える」と考えを深めて、感想を寄せてくれた。違うから、自分の苦手を埋めてくれる人がいるし、相手の苦手に手を差しのべられる。それは障害の枠をこえて言えること、とつづってくれた。

発達障害の「当事者」としての似鳥さんの言葉を、「家族」という立場の尾崎さんが受け取り、「みんな違う。これでいいのだ」という答えにたどり着いたことに、希望を感じた。尾崎さんが指摘するように、多くの人がそのような考えをもって、それぞれの苦手を受け入れ、得意を伸ばしていけるようになったら、もっとみんなが「生きやすい」社会になるのではないか。そんな社会を目指していきたいと思った。

尾崎さんの、「見えている世界がちょっと変わるかもしれない」という言葉に勇気をもらった。尾崎さん、ありがとう。

鈴木 彩子(朝日新聞社記者)(2021年12月22日)