第12回いっしょに読もう!新聞コンクール 最優秀賞(高校生部門)中田結子さんへの記者からのメッセージ
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より良い世界のために
読者の存在を励みに
中田結子さん、受賞、おめでとうございます。
記事を読んでいただき、そして、自分の身に置き換えて色々なことに思いを巡らせていただき、筆者として嬉しく思っております。取材活動は山あり谷ありですが、書いた記事を読んでいただいている読者の存在を励みに、これからも頑張りたいという気持ちがわきました。ありがとうございました。
私は今、ミャンマーで取材を続けています。今年2月のクーデター後はなかなかビザが出ず、10月まではタイの首都バンコクから遠隔でミャンマーの取材をしていました。
中田さんが感想文を書いてくれたこの記事もそうですが、私はバンコクからミャンマーにいる助手に連絡し、取材のテーマや質問項目を伝えます。それを受けて助手は取材対象者と交渉し、インタビューに臨みました。
今回の受賞は、拘束されていた2人に直接取材した助手にとっても、非常に嬉しいお知らせでした。
クーデターが起きた2月1日早朝、私がタイから電話をすると、助手の声は震え、泣いているようでした。ミャンマー人として、母国の混迷に感情を揺さぶられながら、彼は日々、仕事をしています。
今回の中田さんの受賞について、助手からもお祝いを伝えたいとのことでした。英語でメッセージを書いてもらい、私のほうで翻訳しました。
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真実を届けたい
朝日新聞ヤンゴン支局のノーコーコーと申します。受賞おめでとうございます。ミャンマーはひどいニュースがあふれていますが、そんな中で日本の高校生が私たちの記事を読み、その感想文が受賞したとの知らせは、私にとって本当に久しぶりの良いニュースでした。
日本の友人たちが、特に若い人が、私たちのことを忘れず、ミャンマーの人々に共感してくれていることを、嬉しく思います。ミャンマー人として、感謝申し上げます。
私はミャンマーの中央部の田舎町で生まれ、13歳でヤンゴンに移りました。ヤンゴンの学校に入学してすぐ、校内の作文コンクールに応募し、最優秀賞に選ばれました。今回の中田さんと似た立場ですね。これが、私がジャーナリストになった理由の一つです。私は幼い頃から本を読んだり文章を書いたりすることが大好きでした。ジャーナリストという仕事を、とても気に入っています。
一方で、正直に言えば、ミャンマー人として、母国のひどいニュースを外国の人々に伝えなければいけない今の状況は、悲しいことでもあります。実は、中田さんがミャンマーの人々の状況を記事で読み、感想文を書いたと知って、私は複雑な気持ちにもなりました。受賞を嬉しく思ったのと同時に、私たちの記事によって、日本の人たちもミャンマーの状況のひどさを感じなければならなくなることが、つらかったのです。
現在のミャンマーは、軍部と民主派グループとの戦闘状態にあります。どちらも、自分たちのやっていることが公正だと信じています。そして、罪のない多くの市民が毎日のように殺されています。
双方が正しいことをしていると主張し、批判した相手には敵のレッテルを貼る。多くのジャーナリストは、ミャンマーの真実を報道するなかで、大きなプレッシャーに直面しています。
私はジャーナリストとして、可能な限り、真実を報道し、国内外の友人たちに真実を理解してもらいたいと思っています。ミャンマーの悲惨な状況をお伝えすることを許してください。私たちのニュースを読み、それをエッセイに反映させてくださったことに、心から感謝しています。
中田さん。ミャンマーを含む世界のことをもっと理解して、世界にとってより良い人になってください。少しでも良い世界になるように、少しでも良い世界をつくるために、貢献してください。
(ヤンゴン支局助手・ノーコーコー)
福山 亜希(朝日新聞社記者) (2021年12月22日)