学習支援アプリと新聞で人種差別問題を学ぶ 愛徳学園中・高校
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シンキングツールを使った授業
=愛徳学園中・高校
愛徳学園中・高校(神戸市垂水区)では、学習支援アプリ「ロイロノートスクール」を活用した取り組みが進んでいます。このアプリを活用し、新聞記事を題材に人権差別問題を考える授業が11月4日、神戸市垂水区の愛徳学園中・高校であり、中学3年生30人が参加しました。同校の廣畑彰久教諭のサポートの下、兵庫県NIE推進協議会コーディネーターが講師を務めました。
県NIE推進協が続ける「コーディネーターによる人権授業」の一環で、教材として、米プロバスケットボール、NBAのウィザーズで活躍する八村塁選手と、弟で東海大の八村阿蓮選手に対し、会員制交流サイト(SNS)で人種差別的なメッセージが送られてきた記事(21年5月6日付神戸新聞夕刊)を使用しました。
授業では「なぜ、SNS上でこのような書き込みが行われるのか」と問い掛け、シンキング(思考)ツールの「Yチャート」を使って、八村兄弟に対して▽投稿者自身のこと▽SNSに関して――の3つの指標別に意見を整理してもらいました。生徒たちは「うらやましさからしっとした」「日頃の不満やストレスをぶつけている」「匿名を利用して勝手な考えを広めようとした」などの意見を共有しました。
さらに、「この問題に対し、私たちができること」として、シンキングツールの「座標軸」を使って、すぐにできること▽じっくりやること▽自分でできること▽他の人の助けが必要なこと―に意見を分類してもらいました。「誹謗中傷以上に応援する」「外国の文化について詳しく学ぶ」「周りの人を大切にするのが基本」「国連で人種差別解消キャンペーンを行う」など多様な意見が出され、生徒たちの思考の深まりを感じました。
授業後、生徒たちは「新聞記事を使うと、学習した内容を新しい視点でとらえ直すことができる」「(今回のように)新聞には悲しくなる記事もある。被害者や弱者のことを考えられようになりたい」と話してくれました。
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(愛徳学園中・高校教諭 廣畑 彰久)
本校は、生徒1人にタブレット端末を1台ずつ付与し、主に学習支援アプリ「ロイロノートスクール」を多くの授業で活用しています。日本新聞協会のNIE実践校に指定された2020年度以来、ICTを活用した授業を多くの先生方に知ってもらおうと、米田俊彦教諭と私が、県NIE推進協主催の公開授業やセミナーで事例紹介してきました。
この日の授業でも、アプリの扱いに慣れている生徒たちはすばやく意見を書き込みながら、いつものように、シンキングツールを使って意見をまとめていきました。現実に起こっている問題と照らし合わせることで、社会科で学んだ基本的人権を自分たちの身近な問題としてとらえ、より考えを深める時間になったように思います。新聞は、教科書に載っている言葉と現実社会の出来事をつないでくれる、格好の教材だとあらためて感じました。
また、新聞記事は裏付け取材や校閲がなされており、信頼できる教材です。新聞記事から疑問点や課題を洗い出し、自らの考えを深めていく。このような授業のあり方は、今日の「探究的」な学びそのものであると感じました。教育における新聞というメディアの果たす役割や可能性は、今後いっそう高まるのではないか、と考えています。
◆ロイロノートスクール=生徒が主体的に学び合う双方向授業を実現するアプリで、実装されているシンキングツールは児童生徒の思考を可視化できるため、他者の意見と比較しながら、自分の考えをつくり出せます。教師と生徒、生徒同士の情報のやり取りがスムーズに進むメリットもあります。
廣畑彰久(愛徳学園中・高校教諭)、石原丈知(県NIE推進協議会コーディネーター)(2021年11月30日)