兵庫県NIE推進協議会・中学校NIE公開授業報告

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新聞記事を読み比べ、気づいた違いを
パソコンに打ち込む生徒たち

NIE活動の一環で、複数の新聞を読み比べ、書き方の違いをまとめる公開授業が1月26日、兵庫県姫路市の豊富小中学校で開かれた。中学1年にあたる7年生29人が数人の班に分かれ、気になる記事3本について意見を交わした。

兵庫県NIE推進協議会主催。同校は小中一貫になる前の2019年度から日本新聞協会のNIE実践指定校に認定されている。

新型コロナウイルス対策のため初めて全面的にテレビ会議アプリ「Zoom(ズーム)で公開。県外の13人を含め、教育関係者ら約50人が参加した。生徒たちは口頭での議論に替え、それぞれがパソコンの学習支援アプリを活用、「Jamboard(ジャムボード)」のデジタルホワイトボードに意見を書き込んで共有した。

授業の前に、班ごとに同日付の全国紙2紙と地方紙1紙が配られており、事前に選んできた同じニュースの記事について表現を比較した。担当した井上佳尚教諭は「公開授業後に班での発表を行ったが、どの生徒も感じたことや読んで気づいたことを端的にまとめ、画面を共有しながら他の班に分かりやすく伝えていた」という。

ただ、生徒間の会話がまったくない授業は先駆的で刺激的だったが、Zoomでの参加者には戸惑った人がいたかもしれない。授業はビデオカメラ2台で教室全体と生徒の手元を写し、参加者のチャットによる質問・要望にも対応したが、「分かりづらかった」との意見も寄せられた。個人情報に配慮しながら、生徒たちの共有画面をどう公開するかも課題だろう。

〈生徒の感想〉金田元佑さん 昨年11月にオーストリアの首都ウィーンで起きた銃撃事件に関心を持ったといい、「これまではどの新聞も同じことを書いていると思っていた。どう伝えるかで読者の持つ印象や考えが変わることもあると思う」、井川美紅さん ANAの過去最大赤字予想の記事を比較し、「数値の変化に焦点を当てた記事や、コロナの影響を書いた記事があった。同じことを違った角度から分析していると知った」

そのほかの生徒の感想はこちら

三好 正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)

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〈公開授業を終えて〉

例年であれば、生徒たちが頭を突き合わせ、切り抜いた新聞記事を「ああでもない、こうでもない」と読み合い、内容を吟味し合う姿が見られるはずだった。しかし、新型コロナウイルス感染症による感染予防の観点から、対面によるグループワークは避けなければいけない。しかも2度目の緊急事態宣言の発出である。今回は一切生徒間の会話をしない授業を行おう、ということで腹をくくった。そして、2学期開始とほぼ同時に1人1台端末となったタブレット型端末(Chromebook)を活用し、生徒が画面上で語り合い、複数の記事を画面上で共有するスタイルをとることとなった。

私が国語の授業で生徒たちに心がけてほしいことは一つ。さまざまな文章を、いろいろな方向から読み、思考することだ。「雪がとけると何になる?」の解答が「水になり、春になる」と言えるような生徒の育成である。

今回の授業でも同様に「事実は一つだが、考え方はたくさん」という見地に立っている。各々の班で興味関心のあるニュースを3紙から選び出し、「この新聞はどんなふうに報じているのだろう」「この新聞は肯定的な意味合いで捉えているけれど、こっちの新聞は否定的な感じがするなぁ」「あれ?この記事同じことが書いてある、なぜだろう?」といったように各々の疑問や発見を1か所に蓄積していく。ICTを活用することで、協働学習の形態をとっているが、個人で表現する活動が大幅に増え、それぞれが課題や活動に没頭するため、より深く、主体的な学びへとつながっていく。データや成果物を共有しているので、進行の度合いなども相互に確認でき、他の班員が手伝い、班全体で読み比べを進めることができた。授業では新聞に出てきた漢字の読み方や難解な用語を、画面上で相互に共有し、教え合う姿も散見された。

人前に立つことを得意としない生徒や、話すことが苦手な生徒も、画面を通じての活動なので、他の生徒の視線や自分の状況をあまり意識せずに発言ができていた。

今回、新聞を中心に据え、ICTのネットワーク機能やデジタルホワイトボード(Jamboard)の共同編集機能を活用した授業を行った。そこで、「まわしよみ新聞」をはじめとする新聞記事の共有や新聞を活用した探究活動に関して、ICTとの親和性は非常に高いと感じた。また、同じ情報を扱うツールとして、もっと活用や研究の余地があるとも感じた。今後も生徒の主体的な学びに直結するような授業デザインを研究し深めていきたい。

井上 佳尚(姫路市立豊富小中学校後期課程教諭)

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<姫路市立豊富小中学校NIE公開授業 参加者の感想>

◇安永 修・兵庫教育大学附属中学校教諭
 生徒たちが集中して新聞を読み、それをパソコンでまとめるなど、真剣に授業に取り組んでいる様子が分かりました。生徒がどのように考え、まとめているのかを、ぜひ見たかったです。
 また、授業者だけでなく、各先生方が撮影やチャットなどにすぐに対応するなど、学校全体で授業づくりをしていることが分かりました。豊富小中学校はNIEやICTへの対応に学校全体で取り組んでおられ、これからの活動に期待したいと思います。

◇原田 祐司・姫路市教育委員会学校教育部長
 2020年4月に、施設一体型の義務教育学校として新たに開校した「蔭山の里学院~豊富小中学校」では、「調べる力」を育むためにNIEとICTなどを生かし、子供たちの学びをつないできました。本時は、まさにその典型であり、3紙の新聞を読み比べ、それぞれの表現の違いや視点の違いに気づくことで、そのニュースの本質を捉えようとするものでした。
 生徒は、自分たちで選んだ記事について、「Iamboard(ジャムボード)」というソフトを用い、班員と同時に編集を進めながら読み深めていました。本時は、緊急事態宣言を受けて画面越しの対話に切り替えたとのことでしたが、生徒たちの学びに向かう集中した姿からは、1人1台端末環境になる前から「調べる力」を育むために積み重ねてきた実践の成果が見て取れました。
 また、画面越しの対話により考えを文章化する必然性が生まれることや、読解力の異なる複数の生徒を支援するために1人1台端末は親和性が高いことなどが分かりました。
 複雑で不確かな状況だからこそ、ある程度の見通しを持った上で「まずはやってみよう」と一歩前に踏み出すことが求められます。豊富小中学校の授業公開は、そのことを私たちに教えてくれました。

◇丸山 実子・時事通信社神戸総局長
 新聞記事の取り込みや意見の書き込みなど、生徒一人一人がJamboardを使いこなしていることにまず驚きました。GIGAスクール時代におけるNIEの幅広い可能性を実感する機会にもなりました。
 拝見した授業が、多紙読み比べの作業が中心だったため、作業の結果発表を受け、どのように指導されるのか非常に関心を持ちました。ただ、生徒の集中ぶりはZoomを介しても十分伝わってまいりました。新聞による表現や視点の違いを色分けした付せんに書き込み、ボードを作り上げる作業は、デジタル慣れした世代にとって、はまりやすい要素があるのでしょう。
 離れていても内容を共有できるボードの特性は、グループ学習の意義をつかみやすいという効果もありそうです。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、非接触型の行動が求められる中、教育現場もさまざまな制約を受けていますが、ICTの活用で補完できることは数多くあると感じました。その教材としても新聞は応用自在だと思います。

◇新田 憲章・広島県NIE推進協議会・中国新聞社NIEコーディネーター
 コロナ禍第3波の中で授業公開をしていただいた豊富小中学校の先生方に感謝します。授業者の井上先生のお話では、本来ならグループワークで行う活動を、緊急事態宣言のためJamboardを活用されたとのこと。生徒が対話することなく、オンラインのJam上で「協働」した学習が展開されるという学習方法の提案でした。コロナ禍が終わり、13歳の中学生がしっかりとした声でNIE活動のグループワークが再開できることを祈っています。
 広島県でもNIE学習会は、中止が続き、やっとオンライン形式での実施ができるようになりました。今回のZoomでの公開授業では、オンライン研修会の運営について重要な示唆をいただきました。会場参加者とオンライン参加者の理解度には大きな差が生じます。その差を埋める情報共有が重要だと感じました。貴重な学びの機会を提供いただいた兵庫県NIE関係者の皆様に感謝いたします。

◇藤塚正人・神奈川県NIE推進協議会・神奈川新聞社NIE推進委事務局長
 新型コロナウイルスの影響で、NIEの実践もまた、当たり前を見直すことが迫れています。人との接触が制限される中、姫路市立豊富小中学校のオンライン公開授業は、NIEにおける新たな学びの在り方が情報通信技術(ICT)学習の成果とともに、「見える化」されました。
 一人ずつ端末を用いて自分の考えを書き込むことで、共同作業をしている形となり、教える側もそれぞれの理解度を把握することにもつながる、と報告されました。
 クラスメートとのやり取りを通して考えを深め、表情や仕草も含めて気づきにつながる対面ならではの学習機会を、どこまでフォローできるか。さらに、情報機器に不案内な世代を含めて教える側がICT学習の練度をどのように高めるか。課題とともに認識を深め展望する機会になりました。

(2月15日)