第10回いっしょに読もう!新聞コンクール 最優秀賞(中学生部門)・上坂大空さんと出会った記者の思い

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表彰式で対談する上坂さん(左)と富田記者

思いやりをつないでいける社会に

 沖縄・与那国島への帰郷時に財布をなくし、見知らぬ男性から6万円を渡され飛行機に乗った男子高校生。男性の思いやりあふれる行動と、お礼を伝えようと地元紙を通じて男性を捜し出した高校生の姿に、感動の輪が広がった。


 高校生は昨年4月、伯父の葬儀に参列するため地元の与那国島に向かう途中で、往復の航空運賃が入った財布をなくし途方に暮れた。声を掛けてくれた男性に事情を話すと6万円を差し出され、予約便に間に合ったという。だが男性の氏名や連絡先を聞きそびれ、高校の先生に相談して地元紙に体験を取り上げてもらった。インターネット上でその記事を読んだ埼玉県の男性が5月、高校に連絡した。


 私はその日、男性の身元が分かったと知り、急いで高校生を取材しに向かった。当時を振り返り目に涙を浮かべながら「感謝を忘れず、困っている人がいたら手を差し伸べられるようになりたい」と話す姿に心を打たれた。男性に電話で話を聞くと、周囲から「だまされたんだよ」と言われていた分、記事を見て涙が止まらなかったという。「少年を信じて良かった」と声を震わせた。高校生と男性は後日、那覇市内の高校で再会を果たした。


対談で初心よみがえる


 富山県高岡市立高岡西部中3年の上坂大空さんは、北日本新聞に掲載された2本の記事を読み、丁寧な字で感想をしたためた。人と人との関わりが希薄になった現代でもこのような出来事があると知り、心が温かくなったという。母親が小学生のころ登校中に転んでけがをし、文具店でばんそうこうをもらったエピソードを紹介して、人との出会いを大切に、困っている人を助けたいと決意を述べた。


 高校生や男性、地元紙記者の心情にまで思いをはせた上坂さんと表彰式で対談し、素直な心の持ち主だと感じた。「人の心に響く記事を書きたい」と記者になった私にとって、初心を思い出させてくれる出来事だった。沖縄から発信した記事を、遠く離れた富山の中学生が読み、考えを深めてくれたこともうれしかった。読者目線の話を聞けて、とても励みになった。


 上坂さんの指摘するように、現代社会では他者への関心が薄れてきていると感じる。一人ひとりが心配りと思いやりを忘れず、受け取った優しさを次の人にバトンパスしていけば、もっと温かみのある社会になるのではないだろうか。今回の高校生や上坂さんの素直な気持ちに心を洗われた立場として、まずは自身の行いから見つめ直していきたい。

富田ともみ(共同通信社那覇支局記者) ※肩書は執筆当時(1月30日)