第9回いっしょに読もう!新聞コンクール 最優秀賞(高校生部門)・小椋由貴さんと出会った記者の思い

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表彰式で対談する小椋さん(左)と古屋記者

「役立つ記事か」不安吹き飛ぶ

 「飲むだけで体重減」「着けるだけで痩せる」。ネット上には、消費者の心理につけ込んだ過剰な宣伝文句の広告があふれている。


 昨年4月に消費者庁の担当になって驚いたのが、商品の性能や効果を実際よりも良く見せる広告などを禁じた「景品表示法」違反が実に多いことだった。業者に対して同庁が再発防止などを求める「措置命令」は2017年度、過去最多の50件に上った。


 特に「痩せたい」という願望が強い女性をターゲットにした健康食品や下着などの広告が目立つ。同庁担当者によると、スマートフォンの普及によって、ネット上で気軽に買い物ができるようになり、悪質業者による根拠のない不当表示を信じてしまうケースが多いという。


 こうした措置命令の発表記事は、1件ずつだとどうしても扱いが小さくなる。誇大広告があふれている実情を世の中に提示し、警鐘を鳴らすためには、見出しの大きな目立つ記事にしたい。そう考え、最近の違反事例をまとめた記事を書くことにした。記事ではネットショッピングの普及が背景にあることや識者の意見も盛り込んだほか、処分を受けた著名企業を一覧表にしたり、見出しも、「飲んだ瞬間に体重減!?」「行き過ぎ広告ご注意」などと工夫した。


注意喚起の記事から深まる考え


 8月1日の夕刊社会面トップに掲載された記事をみて、川越女子高1年の小椋由貴さんは、強い関心を持ってくれた。小椋さんは、うそをついてまで売り上げを伸ばそうとする企業の姿勢に憤りを覚えつつ、母親から「企業側だけを責めるのではなく、自分で考え納得した上で商品を買った方がいい」とアドバイスを受けたという。


 感想文ではインターネットが普及している現状に触れ、「今の私たちに必要なのは疑うことではないか」「その情報が信頼できるものなのか、判断するのは自分なのだ」と提言した。


 不当表示への注意喚起の記事を書いたつもりだったが、小椋さんは、そこからさらに考えを深め、ネット上に氾濫するさまざまな情報全てを疑い、真偽を見極める判断力を付ける必要があることを意見表明していた。


高校生の言葉から新聞の価値を再認識


 新聞記者が、自分の書いた記事の感想を、読者から直接聞く機会はそれほど多くない。自分の狙い通りに問題点が伝わっているのか、世の中に役立つ記事になっているか、不安に駆られることもある。小椋さんの感想文は、そうした不安を吹き飛ばしてくれた。


 ネットの普及に伴い、若者の新聞離れが指摘されて久しい。しかし、表彰式で対面した小椋さんから、何よりもうれしい言葉を投げかけられた。「新聞は昔から読まれており、信頼性が高い」。新聞の力、価値を改めて教えられた気がした。


 日々、締め切りに追われながら取材に駆け回っているが、小椋さんのような読者が一人でも増えることを願いつつ、常に質の高い、読者のためになる記事を継続して書くことを心掛けていきたい。

古屋 祐治(読売新聞東京本社社会部記者)「新聞研究」2019年2月号掲載 ※肩書きは執筆当時(3月22日)