中国ブロックNIEアドバイザー・NIE推進協議会事務局長会議報告

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 中国ブロックNIEアドバイザー・NIE推進協議会事務局長会議が8月18日(金)、松江市にある山陰中央新報社で開催されました。中国ブロック会議の開催は5年ぶりで、開会にあたって島根県NIE推進協議会の有馬毅一郎会長は「各県の課題を率直に出し合うなどの情報交換を行うことにより、各県の取り組みがさらに発展する見通しがもてる会にしてほしい」とあいさつしました。

基調講演「NIEの実力 -新学習指導要領とNIE-」

 日本新聞協会の関口修司NIEコーディネーターより「NIEの実力 -新学習指導要領とNIE― 」と題する基調講演がありました。

 まず、3月に告示された小学校および中学校の学習指導要領において、総則で新聞の活用が記述されたことに着目し、この変化の背景として、大きく以下の2点を挙げられました。一つ目は、学習意欲や社会参画意識の低さ、読書量の少なさとともに携帯電話やスマートフォンの使用時間の長さなどが各種統計調査から明らかになり、それに伴うように、適切な根拠に基づいて説明することを苦手とする子供たちが多いことです。二つ目は、情報化の進展に伴って先の見えにくい社会の変化が起きていく中、応用力や創造力、コミュニケーション力とともに、正確な情報を基に真実を見いだす能力が求められていることです。このような力を育てるものとして、学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」が示されています。この学びの過程のどの段階においても新聞を活用することができることから、「主体的・対話的で深い学び≒NIE」と言うことができると指摘されました。

 実際に、全国学力・学習状況調査(2016年度)の結果やNIEを実践している学校の効果検証結果からも、新聞を活用した教育活動によって学力向上の効果があることが示されました。効果があった教育活動の具体例として、関口コーディネーターは朝学習の時間で継続的に取り組んだ「NIEタイム」を紹介。ここでのポイントとして、①初めは「難しい」「めんどくさい」と言っている子供の背中を教師が程よく押し、②子供主体の活動として、③無理なくこつこつ継続する――ことを挙げ、日常化の重要性を指摘しました。

 新学習指導要領の下、「子供の成長のためにNIE実践の実力を発揮してほしい」という強いメッセージのこもった講演でした。

第5次「学校図書館図書整備等5か年計画」について

 新聞協会の服部朋子新聞教育文化部長より、第5次「学校図書館図書整備等5か年計画」について説明がありました。

 同計画では、新聞配備の配置・拡充に向けた地財措置がこれまでに比べ倍増するとともに、高校への措置も初めて行われました。この措置が実現することにより、中学校以上は学校図書館で複数紙の読み比べが可能となり、主権者教育に資することが期待されています。その一方で、小中学校の約6割では学校図書館に新聞が配置されておらず、中学校、高校では複数紙の配備が遅れている状況も説明されました。

 子供たちの学習を支える環境づくりのため、自治体(教育委員会等)への働き掛けをしていくことの大切さを確認することができました。

各推進協議会の活動について

 「推進協議会の取り組みと課題」「意見交換」では、中国ブロックの各推進協議会の活動報告を基に、これからのNIE推進に向けての話し合いが行われました。

 岡山県からは、個人的な取り組みは広がってはいるものの、学校としての取り組みとなるとためらう傾向があるとともに、出前授業も単発で終わり、学校での取り組みに広がらないことが課題として挙げられました。広島県は、協議会独自認定校が多く(今年度は20校)、バックアップ体制を整えるために学習会の内容を変更したことが参加校増加につながったことが報告されました。今後もアドバイザーによるバックアップと研究会開催を模索していくとの話がありました。鳥取県からは、NIEの認知度が未だに低い一方、学びの効果は認められていることが報告され、PTAや生涯学習との積極的な連携を図っていきたいとの考えが紹介されました。島根県は、若手や女性のNIEアドバイザーの育成とともに、県教委と推進協議会との連携協定を模索していることが報告されました。山口県は、現在低調となっている協議会活動の活性化に向けて、意見交換会や山口大学教育学部との連携を検討していることが報告されました。

 その後の意見交換では、グループに分かれて各県での学習会・研究会の運営や、学校図書館司書との連携などについて、より具体的な話が出されました。また、学校と新聞社の思いが一致しているとは言い難い、出前授業の充実や教員研修の機会を広げることの重要性も確認することができました。

本会議のまとめ

 最後に、関口コーディネーターと有馬会長が、取り組みの報告と意見交換を受けて、以下のようにまとめました。

  • 学校でのNIE実践を通じて若手指導者を育成していく
  • そのために、ざっくりとしたカリキュラム化と手軽さが鍵となる
  • 学校図書館司書もさまざまなアイデアを持っているので、話し合いや連携を図る
  • 保護者はNIEに理解を示すし、子供が「楽しい」と言えばなおさら。そのためにも授業公開が重要となる
  • NIEをやると、学力だけでなく学ぶ力も子供に育つ(以上、関口コーディネーター)
  • NIEは新たに付け加わる余分な教育ではなく、今やっている教育の質を変えるものである(有馬会長)

 各協議会の積極的な取り組みを知ることができたとともに、課題を共有し、ともに話し合う時間を過ごしたことで、今後の実践や広がりに向けて有意義な会とすることができました。最後に、来年のブロック会議を岡山県で開催することを確認して、今年度の会議を終了しました。

和田倫寛(松江市立持田小学校教諭/NIEアドバイザー)(2017年8月23日)