PISA型読解力とNIE⑤(完)
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前回、OECDのPISA調査で測定されている「PISA型読解力」の要素としてあげられている「熟考・評価」の力を育てるためのNIEについて提案いたしました。今回は最後に「取り組む能力」を高めるための実践を紹介したいと思います。
1.「取り組む能力」
PISA型読解力を構成する要素としてOECDは「取り組む能力」も重要な要素の一つとして付け加えました。私が新聞を活用して、PISA型読解力を伸ばす指導をしたいと、文部科学省の水戸部修治調査官に相談をしたところ、「取り組む能力を、らせん的に高めていくための手立ても必要となる」というご指導をいただきました。つまり、情報を自分から求めていく姿勢も大切な能力なのだととらえました。
2.スクラップしたい記事や調べたいことを明らかにする活動
水戸部調査官のご指導をもとに、新聞スクラップを行い、感想などを書いた後には、「次にどんな記事をスクラップしたいか」、また「記事を読んでどんなことを調べたいと思ったか」ということを、理由も添えて書かせる活動を行うようになりました。読んだ記事について、さらに継続して経過をスクラップしたり、記事の内容をより詳しく調べてみたりすることで、積極的に情報にアクセスしていく姿勢が養われると感じています。
3.児童の反応
児童には毎週の新聞スクラップの時間に、読んだ記事の感想を書かせています。その上で、次にスクラップをしたい記事について書いたり、記事の内容についてさらに調べたいことを考えたりする活動を行っています。児童の中にはウミガメの産卵の記事を読んで、さらにウミガメの生態について調べた子もいます。また、スクラップした記事をもとに1週間、関連する記事を集めた児童もいます。このような活動を続けていくことでPISA型読解力の重要な要素である「取り組む能力」も高まってくると考えています。
4.終わりに
今回、5回にわたってPISA型読解力とNIEについて述べてみました。これまで、NIEの実践を行うにあたって、「児童の興味関心を高めるため」ということに一番の重点を置いてきました。しかし、これからは学力の向上にNIEが役立つということを実践において示す必要もあると感じています。PISA調査は現在、最も注目される学力調査の一つです。NIEの実践によって、PISA型読解力の向上が図られるということを示すことによって、より多くの学校でNIEの実践が行われるのではないかと考え、今回、私の実践について紹介させていただきました。これからもNIEの実践を続けていきたいと考えています。
菊池健一(さいたま市立東宮下小学校教諭/NIEアドバイザー)(2014年11月5日)