NIE×ICTの試み① ~NIEとテレビCM~

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 奈良女子大学附属中等教育学校では中学2年生で「情報と表現」という学校設定科目(各学校で独自に設けている科目)を設けています。
 生徒の身の回りにある様々な情報を読み解くことや情報を自ら発信することを通じて、情報分析力や情報判断力、情報のメタ的な分析を行う態度と力を身につけて生きることに役立てようというねらいの科目です。
 この科目では、毎年、テレビCMの分析からテレビCM制作へという学習活動に取り組んでいますが、NIEとも融合させています。
 今回視聴したCMは洗濯洗剤「エマール」と自動車のCM。分析の切り口は、「このCMがターゲットにしている人はどんな人?」。
 そこから身の回りにあって日常あまり気づくことのない「ジェンダー」(性差による社会的役割のちがい)という社会的文脈への気づきに展開していきます。
  「エマール」のCMを見ると、生徒たちはかならず「これは女性対象で20代後半から50代ぐらいの主婦層をターゲットにしている」と分析します。「なぜそう思うのか?」。自らの判断を問い直すことで、このCMの表現の特徴が明らかになり、論理的に言語化できるようになります。
  同時に、「なんで洗濯は女の人なん?」との問いかけでジェンダーへと展開していきます。自分たちが無意識に「感じさせられている」「読み取らされている」こと、しかもそのことにはまったく疑問を持たずに生活していること、に生徒たちは気づいていきます。
  自動車のCMは、なんとジェンダーの壁をこの自動車のある機能(ボタン)が、壊す!と分析できるCMです。これもおもしろいです。
  でも、じつは、ジェンダーの次に「家族は協力しあうもの」という新たな枠組みの中に、誘導されていくCMでもあります。
 
 NIEですが、資生堂の育児支援策が、女性を育児に向かわせるという方向へと進めてしまったという内容を含むものです。この記事を中学2年生が読み解くことはたいへん難しいのです。なぜなら、ジェンダーという社会的文脈の知識が必要で、かつ、それは自分たちが暮らす社会の中で無意識化されているという前提を理解する必要があるからです。テレビCMでの学習活動を前段階に置くことで、記事の分析が可能になります。

  「なぜそうなるのか?そうならないためにはどうしたらよいのか?」
 記事を分析しつつ、解決困難な課題(しかし将来自分たちが直面する課題)について、論理的に考え、話し、発表するといった活動をしました。
 物事の本質を捉える態度や力、論理的に考える力、話そうとする態度、それらの力や態度をのばそうとしています。
 テレビCMと新聞という、一見関連のないメディアの表現を融合させた学習活動とすることによって、生徒たちには身の回りのメディアの表現の「文脈」を分析しようとする態度と、分析するためのスキルを身につけることができました。
 この態度とスキルを、この後のテレビCM制作によって、こんどは制作者側に立って表現を作ることによって、体験的に理解を深めました。

 

NIEアドバイザー/奈良女子大学附属中等教育学校教諭 二田貴広(2014年2月26日)