ジャーナリズムの役割
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紀子さま男子ご出産を報じる
2006年9月6日付の読売新聞号外
(読売新聞東京本社提供)
日々発生する世の中の出来事や時事的な問題を報道、解説、論評するのがジャーナリズム(Journalism)です。国内外の政治、経済、社会現象からスポーツ、科学、文化活動に至るまで、さまざまな分野の現代史を記録し続けています。新聞、テレビ、ラジオ、雑誌のほか、最近はインターネットが加わり、一人ひとりの記者やリポーターが現代社会の息吹を伝え、身近な社会に潜んだ問題点や課題を掘り起こしています。
日本で明治以来100年以上の歴史を持つ新聞は、大勢の記者が第一線で取材した国内外の複雑な事柄をわかりやすい記事に、いわば翻訳して読者に伝えます。各新聞社は、豊富な取材網を駆使して入手したニュースの価値を判断し、読者が一目でわかるように大小の見出しをつけて紙面に割り付け、時間に追われて忙しい読者がざっと見ただけでも、内容を大づかみできる工夫が凝らしてあります。
耳目を驚かす大ニュースが発生し、速報のために号外(無料)を発行して各地の街頭で配ると、最新ニュースを求めて大勢が号外に手を伸ばします。
日本新聞協会が54年ぶりに改定した新聞倫理綱領(2000年6月制定)は、新聞の責務と使命について、「おびただしい量の情報が飛びかう社会では、なにが真実か、どれを選ぶべきか、的確で迅速な判断が強く求められている。新聞の責務は、正確で公正な記事と責任ある論評によってこうした要望にこたえ、公共的、文化的使命を果たすことである」と記しています。
優れた報道に贈られる新聞協会賞には、全国に広がっていた「高校必修科目の未履修」の初報(2007年度)、「昭和天皇がA級戦犯の靖国神社合祀に不快感」を記した元宮内庁長官日記・手帳の報道(2006年度)、「自衛官募集のための住民基本台帳情報収集」(2003年度)など、隠されていた、あるいは埋もれていた事実を明らかにして社会に問題提起した報道が多く、世の中の仕組みを改善する結果につながる場合が少なくありません。これこそジャーナリズムの真骨頂でしょう。
21世紀の将来を占う地球温暖化問題に対する各国の取り組みも、世界の研究者と政治家、行政と企業、一般市民まで巻き込んだ幅広い動きを継続的に報道してきたジャーナリズムが正しく機能した結果、共通認識が高まり、事態改善へ動き出したといえるのです。
課題も抱えています。大きな事件や事故の際、当事者や関係者にマスコミが殺到する集団的過熱取材(メディアスクラム)に対して、日本新聞協会は取材陣がとるべき行動規範を提唱し、取材を受けた人たちから苦情を聞いたら早急に事態改善するための協議機関を全都道府県に作り、適切な取材対応に努めています。また、個人情報保護法の施行(2005年4月)をきっかけに、匿名発表が増え、真相究明に迫る実名報道や検証報道を妨げている問題に息長く取り組んでいます。
(読売新聞東京本社・高野義雄 2008年4月)