第5回NIE効果測定調査結果概要
新聞を読んで社会に目を向ける
NIE(新聞を活用した授業)を受ける前と受けた後で児童・生徒の新聞の閲読頻度(「毎日読む」と「ときどき読む」を合わせた数値)は、小学生(71.0%→80.1%)、中学生(64.7%→66.9%)、高校生(60.5%→64.0%)と、校種を問わず実践後に拡大している。同時に、閲読時間が「5分未満」と答えた割合がすべての校種で減少しており、NIEを通じて新聞の閲読習慣が身に付くとともに、新聞への接し方が深まっているのではないか。
NIE実践後の児童・生徒の変化については、約75%の教師が「新聞を読むようになった」と答えており、児童・生徒の閲読習慣の変化を教師も実感しているようだ。このほか「記事について友人や家族と話すようになった」「自分で調べる態度が身に付く」「読む、書くことが増えた」「生き生きと学習する」の項目で、6割以上の教師が児童・生徒の学習態度の変化を感じていた。
よく読む記事は、小学生、中学生では実践前後ともに上位6種類が同じ(まんが、ラジオ・テレビ欄、スポーツ、天気予報、事件・事故、芸能)であるが、実践後は社会、科学、地域など、社会生活に関連する記事を読む割合が高まっている(詳細は7,8ページ参照)。高校生もほぼ同様の傾向だが、実践後は上位5種類の中に社会が加わってくる。さらに、新聞を使った授業を受けて関心を持つようになったことの上位に事件・事故といった社会や政治・経済の分野が入り、環境問題への関心も高まっている。70%以上の小学生・高校生、65%以上の中学生が授業で時事問題やニュースを扱うことに対し評価しており、授業で時事問題やニュースを扱うことにより、社会的な諸問題への関心が高まることがうかがわれる。
教師側の課題
他方、教師の新聞閲読時間は前回(2005年度)調査と比べ、「5分未満」「5分以上15分未満」「15分以上30分未満」が増え、「30分以上60分未満」「60分以上」が減るなど短縮傾向にあるほか、”新聞活用の難しさ”について、「教材研究の時間不足」「教科の指導内容が増え、新聞活用の時間の確保が難しい」など、時間不足を訴える回答が多かった。しかし、新聞活用への期待としては「社会への関心が高まること」「多面的な見方・考え方が身につくこと」などを中心に高い関心が示され、児童・生徒の回答からも、新聞活用により彼らの社会や政治・経済への関心を喚起できている実態がうかがえる。教師がNIEに期待を寄せ、結果にも結びついているにもかかわらず、新聞活用のための時間が足りないというジレンマを抱えている現状が改めて浮かび上がった。
児童・生徒が情報源として利用しているものは「テレビ」「新聞」「パソコン(インターネット)」が多い。実践前後を比較すると、新聞から情報を入手する割合は増えており、児童・生徒に新聞の有効性が認知されたことが明らかになった。今回、設問に携帯電話を加えたが、学年があがるにつれて携帯電話を含めたインターネットの利用割合が増えている。「新聞」「テレビ」「インターネット」などメディアの特性や違いを十分に教える必要がある状況も浮かび上がった。
新聞記事が会話を促す
新聞記事に関して会話する頻度については、「よく話し合う」「ときどき話し合う」を合わせると、実践前は小学生で56.1%、中学生で37.9%、高校生で39.5%だった。実践後は実践前と比べて新聞記事に関する会話頻度が変化したかどうか尋ねたため設問内容が異なるが、実践前後で「ほとんど話し合わない」と答えた割合を比較すると、小学生が42.6%→22.0%、中学生が60.9%→43.1%、高校生で59.2%→52.2%とそれぞれ改善されており、新聞記事が周りの人とのコミュニケーションのきっかけとなるとともに、児童・生徒のコミュニケーション能力の育成に役立っていることがうかがえる。
会話の相手は実践前では小学生・中学生・高校生ともに「家族」が最も多かったが、実践後では中学生・高校生で「友人」が「家族」を上回り、小学生でも「家族」と「友人」の差が縮まった。これらの結果からは、新聞記事に書かれた出来事について、「友人の考えを吸収し、自身の考え方と比較しようとする姿勢」が強まっていることがうかがえる。
国語・社会・総合で多く実践
新聞を活用している教科・領域については、小学校では「国語」が最も多く、「社会」「総合的な学習の時間(総合)」で実践されている割合が高かった。中学校では「社会・地歴・公民」「総合」「道徳」の順、高校では「社会・地歴・公民」「国語」での活用が多かった。
調査概要
調査対象
2009年度新規NIE実践指定校248校の児童・生徒および教師
調査目的
NIEの実践前と実践後で、新聞の閲読頻度、よく読む記事などの変化を分析するとともに、NIE実践を通して身に付く学習効果を明らかにする。
調査方法
郵送法(実践教師および児童・生徒が各学級単位で個人記述)
回答者数
児童・生徒
実践前 | 実践後 | ||
---|---|---|---|
小学校 (59校) |
男性 | 923 | 903 |
女性 | 865 | 846 | |
計 | 1,788 | 1,749 | |
中学校 (54校) |
男性 | 836 | 817 |
女性 | 830 | 815 | |
計 | 1,666 | 1,632 | |
高等学校 (37校) |
男性 | 575 | 577 |
女性 | 776 | 738 | |
計 | 1,351 | 1,315 | |
特別支援学校 (1校) |
男性 | 8 | 8 |
女性 | 5 | 4 | |
計 | 13 | 12 |
※中高一貫校からの回答は、回答者の学年に応じ中学校または高等学校として集計した。
実践前のみ回答がある学校、集計前後で回答者・回答数が大幅に異なる学校については、集計・分析の対象から除外した。
特別支援学校については、サンプル数が少ないため表やグラフの掲載を見送った。
教師
学校数 | 回答数 | |
---|---|---|
小学校 | 55 | 146 |
中学校 | 54 | 171 |
高等学校 | 32 | 119 |
特別支援学校 | 1 | 1 |
計 | 142 | 437 |
※中高一貫校の教師からの回答は、生徒の回答の区割りと揃えた。
調査期間
2009年9月~2010年3月