新聞を活用した教育実践データベース

新聞を活用し、見方や考え方を働かせ、表現していくことをめざす社会科学習 初心者向け

木曽町立木曽町中学校(きそちょうりつきそまちちゅうがっこう)

実施年度

2019年度

教科、科目、領域

中学校: 公民
学年 中学 3年
使用教科書発行会社 東京書籍
基本的人権の尊重~どこまで自分の権利は認められる?~
単元前半で基本的人権の概念をつかみ,後半で基本的人権に対する考えを深める(「基本的人権」の概念を生かす)ことを目的としている。
①授業の導入場面で,生徒の考えを揺さぶり,「あれ?どうしてだろう?」という驚きや問いをもたせるための工夫として,新聞記事を活用する。②追究場面で,自分の考えを明確にしていくために,複数の新聞記事を活用する。①②を通して,根拠をもって自分の考えを明確にしていける授業を展開した。
新聞活用学習

前半は,基本的人権の内容について具体的な事例を通して,一人一人が個人として尊重されながら人間らしく生活するために生まれながらにもっている権利であり,全ての人々に平等に保障されていることや,現代社会において憲法に直接的に規定されない権利も個人を守るために新しく生まれてきていることなどの概念をつかむ。後半は,その概念を生かし,「学校に防犯カメラを設置することの是非」をテーマに,全体の利益と個人の人権との対立を合意に導くために,さまざまな立場から考え,効率と公正が保たれるように判断できる力をつけていく。

50分授業 全11時間扱い 本時は第10時

1裁判結果や防犯カメラのメリットから,学校に防犯カメラを設置することが許される?
・ストリートビューが訴えられた裁判の判決結果の新聞記事から思ったことや,「悠仁さま机に刃物男逮捕」の新聞記事から,防犯カメラのメリットを確認する。
2自分にとって,学校に防犯カメラを設置することをどう考える?
・グループで参考になる新聞記事を読み,「自分にとって」という視点から考える。
・防犯カメラを設置することで,学校が安全になり,学校生活を過ごしやすくなるメリットを確認する。一方,カメラ設置による個人の人権への不安を取り上げる。
3防犯カメラを設置するにあたって,自分にとって不安を少しでもなくすためにはどう工夫すれはよいだろうか?
・防犯カメラの設置の是非について問題提起している新聞記事から,グループとして防犯カメラを「自分にとって」不安のないものにするためにはどうしたらいいか,効率と公正の視点で考える。
・自分たちが納得する防犯カメラの設置にするために,どんな視点から考えたのかを踏まえてまとめる。

・防犯カメラ設置の是非についての意見交換の場面では,新聞記事を根拠として自分の考えを話し合うようにさせる。また,根拠のない感情論にならないようにする。

●授業を終えて
・学校はみんなで生活するところ。先生など一部の人で設置場所を決めるのではなく,生徒の合意を得ることが大切だと思った。
・人が嫌だなと思う限度は人それぞれ。人が嫌がることはしない方がいいが,大勢の役に立つなら少しの我慢は必要とも思う。

導入場面で,前時まで学習したことと正反対の事実を示す記事を用意したり,記事の提示の仕方を工夫したりすることで,子どもたちが自ら「問い」をもつことにつながった。また,追究場面では,学習カードなどの工夫と,自分の考えの根拠を明確にできる記事の活用,対立が生まれるような指名計画を立てることで,子どもたちの意欲や根拠のある考えを大切にした話し合いを行うことができた。しかし,記事の価値を授業者がとらえきることができずに,授業の終末場面では子どもたちの意識を誘導してしまった。複数の記事を提示して考えていくことだけでなく,1つの新聞記事でじっくりと考えを深めさせていくことも考えられる。魅力ある新聞記事のもつ価値について,教材研究を深めていく必要性を感じた。

実践者名:木曽町立木曽町中学校 平原 稔久