新聞を活用した教育実践データベース

新聞記事を読み比べ、消費増税について考える 初心者向け

加古川市立川西小学校(ひょうごけんかこがわしりつかわにししょうがっこう)

実施年度

2019年度

教科、科目、領域

小学校: 社会
学年 小学 6年
使用教科書発行会社 東京書籍
わたしたちの生活と政治~なぜ消費税は増税したのか~
政府が消費税を増税した理由について考えることで、国政や市政への関心を高めながら、よりよい社会の在り方について自分の考えをもつことができる。
新聞記事を読み比べるだけでなく、単元の最後に自分の考えを新聞の投書欄へ投稿する活動を設定することで、児童の社会参画を促す。
新聞活用学習

本単元は、国政や市政の働きについて学ぶ単元である。本単元では、令和元年から増税された消費税を社会事象として取り上げる。消費増税を取り上げることで、増税も国民の願いを実現したものであり、その願いを実現するために国会・内閣などそれぞれの役割があることを具体的に理解させることができると考えた。さらに、その中で学習した内容や増税に関する新聞記事を読み比べることで、「商品が値上がりするから反対」という偏った見方だけなく、多様な視点をもって増税の意味について考えることができ得ると考えた。(全10時間)

1-10時

授業では、まず消費税の増税に関する政府広報紙を配布し、増税の使いみちについて確認をさせる。その中の「幼児教育の無償化」について取り上げ、本当に子育て世代の親の願いなのかという疑問をもたせながら、実際の声を聞くインタビュー活動へとつなげたい。また、インタビューを通して分かった親の思いをまとめていきながら学習計画を立てていくことで、国会・内閣について関心を高めながら学習していけるようにする。税金の働きについては、大阪国税局の副読本を活用し、税金にはどんな種類があり、税金は何に使われるのかを知ることで、消費税を含む税金が国民生活に必要不可欠なものであることに気付かせたい。また、国会や内閣の働きの学習では、消費税の増税や幼児教育の無償化は総理大臣が独自で決めたものではなく、選挙で選ばれた国会議員が国民の願いを実現するために法案をつくり、国会で慎重に議論された上で法律になったことに気付かせたい。また、本単元では、新聞の投書欄に増税について自分の考えを書く活動を設定している。その際に、これまで学習してきた「増税は国民の願いの実現やこれからの社会のために必要だ」という見方だけでなく、消費税のメリット・デメリット、軽減税率の取り組みなどの記事を読み比べることで、社会事象に対して多様な見方をもって自分の考えをまとめ、社会に参画していける児童の育成を目指したい。

本学級では、国語科の「新聞の投書を読み比べよう」の学習において、社会事象に対して自分の考えをもち、実際に新聞の投書欄に投稿する社会参画活動を行ってきた。また、毎週水曜日を新聞学習の日として、関心のある新聞記事をスクラップし、考えたことを書く活動を積み重ねてきた。このように、ある単元だけにおいて新聞を活用するのではなく、日頃から新聞を身近なものにし、社会への関心を高めておく必要がある。

賛成派は、「少子高齢化が進んでいるから将来のためには仕方がない」「国会議員が慎重に決定をした」「負担を軽くする軽減税率もある」「高くても海外のように社会保障が充実する」と主張し、反対派は、「収入が少ない人ほど負担が重い」「物の値段が上がるともっと不景気になる」「軽減税率がわかりにくい」「国の予算や無駄を先に削るべき」「一部の人にしか使われていない」と主張するなど、多様な視点で主張をぶつけ合った。

新聞記事の読み比べをした上で討論を行うことで、少子高齢化や社会保障、軽減税率などの多様な見方から消費増税について考えることができた。また、授業前は、「物が高くなるから反対」という、生活経験の中だけの考えをもつ児童が多かったが、授業後に書いた投書には、「これからの社会のためには必要だから賛成」「一部の人にしか得がないから反対」など、多様な見方で自分の考えをまとめることができており、児童の変容を確認することができた。さらに、今まで「関係がない」と感じていた政治や社会問題が身近なものとなり、これから自分たちが社会の一員となり考えていかなければならないという意識の変容も見られた。

実践者名:加古川市立川西小学校 藤池 陽太郎