新聞を活用した教育実践データベース

自分の生き方を考える ~死亡記事をとおして~

高知県立窪川高等学校(こうちけんりつくぼかわこうとうがっこう)

実施年度

2016年度

教科、科目、領域

高校(高等専門学校を含む): 国語 、キャリア教育・進路指導
学年 高校(高等専門学校を含む) 2年
使用教科書発行会社 大修館
新聞の中の「人」 -死亡記事と自分の生き方-
新聞の中の「人」、特に死亡記事に注目し、考え方や価値観を学ぶとともに、自分自身の「死亡記事」の創作をとおして、自己の生き方を深く見つめさせる。
ニュースや話題の主人公は「人」であるという認識のもと、新聞をとおして「人」の生き方や価値観を学ぶという視点に立って取り組む。
新聞活用学習

1 印象に残る死亡記事を探し、他紙の記事も読み比べその人の生き方を知る。(2時間)
2 わからない言葉や名前、知らなかった出来事等を調べる。(1時間)
3 自分を一生を終えた人物と見て、書くべき経歴や業績、エピソード等を考える。(2時間)
4 「私の死亡記事」(文藝春秋社、2000年)や新聞記事を参考にして、自分の死亡記事を書く。(2時間)
5 相互批評や他の新聞記事等を参考にして作品を推敲する。(1時間)
6 完成した記事を鑑賞し合うとともに、これからの生き方について考える。(2時間)

1~10時

(1)朝日新聞と読売新聞から気になる死亡記事を探し、両紙を読み比べ人物に対する興味関心を高める。
(2)わからない言葉や関心をもった人について、他の資料等を使って調べる。
(3)自分の死亡記事を想定し、今後の経歴や業績、エピソード等を考え理想の生き方を追求する。
(4)存命中の著名人が創作した「私の死亡記事」を参考に自分の死亡記事を書く。
<工夫させたところ>
・袖見出しで自分をひと言で表現する。(「 」内は生徒作品)
「○○○先生、さようなら-貫き通した保育士人生-」
園児の言葉を効果的に使い、子どもに慕われる先生として仕事に打ち込む決意を表現している。
・記事の最初の一文で自分を簡潔かつ的確に表現する。
「地元で働く保育士を、同じ仕事を経験してきた立場で助けたいと思い、活動を続けてきた保育士の○○○○さん…」
理想の保育士像を簡潔かつ的確にまとめ、将来を明確にしている。
・エピソードや第三者の言葉で多角的に見つめる。
エピソードや第三者のコメントを考え、自分を多角的な視点から見つめ、将来像を具体的にしていた。
(5)相互批評を行い、指摘された意見の中で納得したものは取り入れて作品を推敲する。
(6)作品完成後、お互いの記事で印象に残ったことを抜き出し、感じたこと考えたことを話し合い鑑賞を深める。

・死を考えることは生を考えることとはいえ、デリケートな授業設定のため、生徒に不安や恐怖心をもたらさないよう配慮しなければならない。
・いきなり死亡記事に注目させるのではなく、新聞の中のさまざまな「人」に注目させる授業計画が求められる。
・創作が空想や夢物語に終わらないよう、現実と関連づける視点が必要である。
・お互いを尊重し、互いの意見や考えを共有できる学習集団であることが不可欠である。

取り組みを振り返っての感想には次のようなものがあった。
・自分の死亡記事、最初は「え?」ってなったけど、いざ書くといろんな自分を表現できて楽しかった。
・自分の人生を考えることは簡単そうで意外と苦労しました。これからの人生、何を考えて、求めて、何をしていくのか考えられるいい勉強になりました。少しでも理想に近づきたいです。
・自分の将来を想像できて、これから何をしたいのか整理できた。

今年度は継続して「人」の生き方に注目させて取り組んでおり、死亡記事に対しても抵抗なく授業に入ることができた。感想にもあるように、自分の生き方を客観的かつ具体的に考えられたことが成果として挙げられる。現在から未来を考えるのも、人生の最期から今を振り返るのも一見同じように思える。だが、一生を終えたものという設定によって、自分をより客観視する視点をもたせることができた。また、見出しや書き出しの自分に対する説明は、簡潔かつ的確にしなければならないがゆえに、今後の人生を見通すことに繋がった。一方、創作が夢物語になり、ユーモアが単なる笑いで終わる危険性もある。創作やユーモアの真意をしっかりと理解させておく必要がある。今回の生徒の作品や取り組み状況を丁寧に分析し、この学習のさらなる教材化を図りたい。

実践者名:高知県立窪川高等学校 浜田 睦雄