新聞を活用した教育実践データベース

高校放送局での新聞活用の試み2年目 初心者向け

北海道旭川東栄高等学校(ほっかいどうあさひかわとうえいこうとうがっこう)

実施年度

2015年度

教科、科目、領域

高校(高等専門学校を含む): その他(部活動(放送局))
学年 高校(高等専門学校を含む) 1年 、2年 、3年
使用教科書発行会社 その他
部活動(放送局)
放送局の課題である企画力と会議力の向上を目的に、新聞を使ったワークショップを試みる。
記事に限らず、読者投稿・広告など新聞のあらゆる掲載内容をモチーフとして、番組企画書・ドラマのシチュエーションづくりのワークショップと模擬企画会議を行う。
新聞活用学習

(1)ワークショップ1 新聞から番組企画書をつくろう
(2)ワークショップ2 新聞からさまざまなドラマのシチュエーションを考えよう

冬休みなど時間をとれる時期に

(1)ワークショップ1 新聞から番組企画書をつくろう
①企画書の条件と書式の提示
1.「高校生に向けた番組」でなければならない。
2.記事は「高校生」「学校」と関係なくてもかまわない。
3.モチーフとなる新聞記事は「記事」でなくても良い。
4.現実に制作可能な番組を考えなければ意味がない。
②記事を選び、A4の書式に企画書を書く
 新聞のストックから各自数部を選んで目を通す。番組企画になりそうな記事や見出しを探して切り抜き、それをモチーフに全国の高校生がグッとくるような企画の提案をめざす。
③グループでのディスカッション
 学年・性別などは関係なく、局員全体を5.6人の2つのグループに分けた。グループごとに、各自の企画書を発表し、それについて建設的な意見を出して、それぞれの企画のブラッシュアップをめざす。
 その後、グループ内で話し合って一推しの企画を一本選ぶ。
④全体でのプレゼンテーション
 それぞれのグループが一推しで選んだ企画を全員の前でプレゼン。
(2)ワークショップ2 新聞から様々なドラマのシチュエーションを考えよう
①シチュエーションの条件の提示
 誰と誰が、いつ、どこで、どんな状況からストーリーが始まるか。
②新聞記事を選び、ドラマのシチュエーションを考え、A4用紙にまとめる。
③グループでのディスカッション
④全体でのプレゼンテーション

企画書づくりでは「高校生ネタ・学校ネタ」にこだわらないように強調した。新聞に載っているのは、日本中・世界中のさまざまなニュースや話題であるから、そこから「これは高校生に伝えたい」と思うネタを探す。また、番組ネタはニュース記事にあるとは限らない。コラムやイベント情報、商品の宣伝など、新聞を隅から隅まで見て何が載っているのか掘り返す。ワークショップとはいえ、実際に取材や撮影が不可能な企画は論外である。

インタビューや文化欄、広告、料理レシピ、読者投稿などさまざまな記事からネタを発見した。少人数のグループで議論したため、従来の企画会議で発言できなかった1年生も、話し合いに加わった。多くの企画を捨てて、1つの良い物を選ぶという過程で、単なる多数決ではない会議の決定プロセスを経験させることができた。グループの仲間意識や対抗意識が作用して、プレゼンでは質問や意見が飛び交って盛り上がった。

 企画力と会議力の向上を目的に、新聞を使った番組企画のワークショップを2つ試みた。企画書書きから提案のプレゼン、話し合いによる企画決定のプロセスを経験させることができた。しかし、テレビを見ない、コミュニケーションはSNS、ホームルームの議論は成立しないという生徒の実態を考えると、数度のワークショップの経験で、いきなり企画力や会議力がアップするわけではない。自分たちの現状と課題を認識させ、企画会議の方法論を学ばせるという点で良い機会となった。NIE1年目に取り組んだ、放送活動で新聞を読むという試みも、取り組み半ばである。旭川東栄高校の閉校まであと2年である。残り1年数か月となった東栄ブロードキャスティング・ステーション(TBS)の活動だが、少しでも良い放送表現ができるよう、新聞の力も借りながら、生徒とともに取り組んでいきたい。

実践者名:北海道旭川東栄高等学校 久保田 弘