実践指定校実践例 2012年度

東京都立千早高等学校におけるNIEの実践について

東京都立千早高等学校(とうきょうとりつちはやこうとうがっこう)

教科、科目、領域

高校(高等専門学校を含む): その他(ビジネス(商業))
学年 高校(高等専門学校を含む) 1年
新聞を用いたビジネス基礎の授業
身近な題材を通して経済活動について考えさせるきっかけをつくる。授業で新聞記事や広告を取り上げることで今まで新聞を読まなかった生徒に興味を持ってもらう。
ネット記事との違いや、同じ記事でも新聞社によって表現が異なる点を取り上げる。新聞広告の特徴について学ぶ。
新聞活用学習

1年生ビジネス基礎2単位の中で、年間を通して新聞に親しむ機会をつくるため授業の導入や合間に新聞を活用してきた。特に1学期は導入での実践を中心とし、2学期から新聞の内容について解説を加え触れていった。1時間すべて授業の中で新聞のみを取り上げるということができなかったため、毎時間少しでも新聞に関する内容を取り上げる、ということを1、2学期に行った。

第1時

はじめに、生徒の新聞に対するイメージを把握するため簡単な意識調査を行った。その結果家庭で新聞を購読していない生徒がほとんどで、新聞紙面を開くという経験を持たない生徒が多いということが分かった。生徒の新聞に対するイメージは「近寄りがたく難しいもの」であった。1学期は教科書の経済用語に慣れてもらうため、新聞記事を扱うというよりは、難しいイメージを払拭するような内容を選んだ。コラムやエッセイ、地域のイベントなど読みやすい記事を中心に自由に意見を出し合う機会を授業の合間に設けた。定期考査では新聞記事の要約に関する問題を導入している。2学期に入ると、生徒の新聞に対するイメージも変わり、実際に記事を読み、解説を加え、感想を話し合うことができるようになった。授業でマーケティング分野に入ると、ヒット商品ランキングや新製品の売上に関する新聞記事にさまざまな意見が生徒からあがり、「規制緩和」「東京電力」「いじめ」など話題のキーワードについても積極的に話し合えるようになった。

高校1年生の生徒に新聞は難しいというイメージがあったため生徒が親しみやすい内容から取り上げるようにした。特に1学期は授業の導入として、「興味を引くかどうか」の一点に絞ったが、他のクラスとの足並みをそろえるため2学期からは解説を加え常に授業の内容とリンクするように努めた。また、新聞記事の内容に偏り過ぎないように、脱線しすぎないように留意した。

1学期の意識調査から想像できないほど新聞に親しみを持った様子で、2学期は新聞を教室に持っていくだけで「今日はどこの新聞ですか?」と聞かれるようになった。定期的に取るアンケートでは「(新商品の売上に関する)予想ができず楽しい」「自分の生活のいたるところに流通が入り込んでいることに驚く」「当たり前の消費活動に感謝の気持ちを持った」「自分でも調べてみたい」という意見も出た。

今年度初めてNIEの担当となったが、受け持つ授業の関係で新聞を活用することが難しい授業(パソコンの実技など)が多かった。苦肉の策として1年生ビジネス基礎2クラス2単位で授業を行った。2クラスとも新聞に対する反応はさまざまであったが、そのうち1クラスではとても活発な授業ができた。深刻な内容の記事に対しても意見交換ができるという進歩が見られ、新聞記事を自主的な学習に活用できるまで近づけたことが成果である。課題としては、年間の授業計画に組み込めなかったため、授業で取り上げる時間が制限されたことである。早い段階に教材として用いるための対策を立てる必要性を痛感した。今後は新聞という生きた教材を最大限に活用するには他の方々の実践例を学び、授業内容を長期的な視野で研究・実践する時間が必要だと考える。

実践者名:東京都立千早高等学校 蔵田 さなえ