実践指定校実践例 2012年度

「すてきなNIE~いみじき事態への特効薬を求めて~

神奈川県立愛川高等学校(かながわけんりつあいかわこうとうがっこう)

教科、科目、領域

高校(高等専門学校を含む): 国語
学年 高校(高等専門学校を含む) 2年 、3年
学校設定科目「実用国語」 (3年選択科目)
教科書教材に関心を持たない生徒に対処するための教材の開発と授業内容の工夫。
ゆるがせにできない「生きざま」を取材した記事=朝日「うたの旅人」、は生徒の心を揺さぶることができる。原発事故や社会の「公然の秘密」を考察する。
新聞活用学習

「実用国語」(3年2単位)年間に60時間実践。朝日新聞土曜日別冊beの記事「うたの旅人」本文(約4000字)と、その要約文(1000字=教員が作成)を教材の一部とした。科目の内容は、(1)「うたの旅人」全文を、要約文の穴埋めをしながら読む。(2)取り上げられた歌のCDを聴く。(3)「天声人語」「編集手帳」「筆洗」などのコラムを書写する。 (4)自分の生き方や、社会問題を見つめなおすことは、発見と感動のある楽しい作業である。それを、原発問題やiPS細胞の記事などを読むことで実感する。

第0時

※年間60時間実践(1)「実用国語」の学習活動:「うたの旅人」本文は、たとえば次のようなものである(朝日be4月14日記事)。「『愛してる』でも、『大好きよ』でもなかった。『負けないで』だった。1993年1月に世に出たZARDの『負けないで』弾むテンポ、盛り上がるメロディーが印象的なサビ。そこにボーカルの坂井泉水さんがのせたのは、頑張る人を励まし支える言葉だった」「2006年4月、子宮がんが見つかる。しかし、体調を崩しながらも母親に付き添われ、レコーディングにやってきた。『歌っておかねばというギリギリの感じに鳥肌が立った』と島田さんはいう。いつまでも変わらぬココロをもう一度君に届けたい(グロリアス マインド)板井さんは、サビをやっとのことで2回ほど歌った。がんは肺へ移転した。繰り返される入退院。そして、07年5月26日、病棟脇の非常階段で倒れているのが見つかり、翌日亡くなった。脳挫傷。手すりに乗っていて3メートル下に転落したとみられている。40際だった」「短い命だった。でも、あなたの歌は、時代を超えて、生き続けていますよ」この要約文は「1993年1月に世に出たZARDの『A』。(B)を励まし支える言葉」「2006年4月(C)が見つかる。繰り返される入退院の末、07年5月26日(D)で倒れているのが見つかり、翌日亡くなった。(E)。40際だった」「でも、あなたの歌は、時代を超えて生き続ける」

教員が記事を読んで、まず心打たれることが重要。教授者側に感動と発見がなければ、それを受け手である生徒たちに伝えることはできない。教科書での授業が無味乾燥になる大きな原因はそこにある。ZARD坂井泉水の生きざまと同レベルで生徒の心を打てる教科書教材はあるのだろうか。授業を受ける動機が定期テストに高得点を取ることだけであるなら、授業についてこない生徒こそ素直だともいえよう。

記事だけ与えても、生徒は読まない。読ませるための工夫が要約文。それを穴埋め形式にすることで、生徒は言葉に注意しながら読まなければならない。教科書教材の文章を穴埋め形式のプリントにしても、取り組まない実態をいやというほど味わってきたので、どうなるかと不安だった。しかし、結果はほとんど全員が見事に集中してこなし、定期テストに同形式で出題したところ、100点満点で平均は、90点以上となった。

「歌にまつわる生きざま」をその内容とする、朝日記事「うたの旅人」は、生徒たちの心を揺さぶる。シンディー・ローパー「トゥルー・カラーズ」(朝日be10月27日)には、大震災当日(3・11)、12日の名古屋公演にむけ飛行機で来日したが、成田空港に着陸できず、羽田におりたシンディー。東電原発の放射能を恐れ、外国人は次々出国する。しかシンディーはツアーを開始する。「トンネルを進めば必ず(A 光)が見える。つらい経験をすれば人間は(B 強く)なる。私の歌で誰かを(C 幸せ)にできると信じる」「シンディーは言う『D 内側』の人々は、お金や(E 見た目)でしか、物事の(F 価値)を判断しない、本当の色は(G 心)を通してしか見えない』」 常にある課題は「読む価値を生徒が認める」記事の発見である。

実践者名:神奈川県立愛川高等学校 星野 智也