実践指定校実践例 2012年度

新聞比較読み・新聞評価読み

都立八王子東特別支援学校(とりつはちおうじひがしとくべつしえんがっこう)

教科、科目、領域

中学校: 国語
学年 中学 3年
言葉と情報~新聞を読んで考える~
情報の発信側の言葉の使い方や表現から、メディア側の意図を読み取ったり、事実とその根拠、根拠のない表現、発信側の意見・考え等を、区別して読み取る。
同じ事件について、異なった表現方法や異なった論点を持っている2紙を選択し活用していくことで、発信側の倫理や受け取る側の注意点を具体的に理解させる。
新聞活用学習

全8時間
1時間目:記事を読み、どのような事件か、要点をまとめる。事件についての、意見・感想を言う。
2時間目:同じ事件について書かれた、2紙目の記事を読む。2紙を比較して、相違点、共通点に線を引く。
3・4時間目:いくつかの点について、2紙に傍線を引いていき、表現の相違点を見ていく。
5時間目:表現の違いから、記者や新聞社の意図について、考える。
6時間目:発信する側として、必要な心構えを出し合う。
7・8時間目:報道倫理基準の作成

第3・4時

(0-1)新聞を活用した授業に取り組む前に、新聞記者による出前授業や、記事に関するスクラップブック作りを行った。スクラップブック作りでは、意味不明な語句を調べ、5W1Hにまとめる練習を繰り返し行った。
(0-2)クリティカルに読む力付けるために、後に冤罪となる事件を扱った記事を題材にした。しかし、初読時の感想は、「この犯人きもい」「こいつ絶対犯人」といった、記事を全面的に信用した上での意見を全員が持っていた。(0)の出前授業の際に、記事の裏側に目を向ける大切さについて、記者から聞いていたにもかかわらず、このような感想が出たため、「評価読み」に加え、「比較読み」を用いることとした。
(0-3)「比較読み」をしたとき、その差が明らかになるように、2紙目は、私自身が事実のみから記事を書き上げ、それを題材として使用した。しかし、違いを聞いても、生徒は明確に答えることが難しい様子だった。
(1)事件のポイントとなる点を挙げ、それについて書かれている部分を、2紙それぞれに、色分けして傍線を引かせた。DNA鑑定についての部分、容疑者について書かれている部分等。
(2)傍線を引いた部分について発表。一つ一つの表現について、2紙を比較しながら意見を述べる。
(3)本当に、この容疑者を犯人と決め付けてよいのかについて考え、根拠を明確にしながら意見を発表する。

〇自分の意見、なぜそう思うのか、根拠となるのは記事のどの部分か、を明確に伝える。〇複数日分の記事を、内容を時系列にまとめることで、記事の裏側を読むよう指導する。〇比較読みしやすいよう、読むポイントを決めておく。〇比較読みしやすいように、対照的な表現の2紙を用意する。〇言葉の意味について確認しながら取り組む。たとえば、家宅捜査とは何か、など。〇記事の出所を確認させる。

生徒全員が、A紙を初読したときは、「きもい」「こいつ絶対犯人」と決め付けていた。比較読みをすることで、A紙について、「どうして、家宅捜査前にへんなビデオがあるって書いたのか?この記者自分で見たのか?」「関係者と警察の発表っていうのは違うよね」「DNA鑑定って絶対なの?」といった、記事の詳細について疑問を向けるようになった。倫理基準についても、いくつも考えが出るようになった。

新聞は正しい、新聞は絶対と考えていた生徒たち。後に冤罪となる事件を題材とし、比較読み・評価読みをし、記事を細かく読み解く中で、「あっ!」と、自分が記事に洗脳されていたことに気付く瞬間が見られ、「これ、まだわからないのに、書いていいの?」と、記事を批判する発言が出てきたことは、車いすで日々受身的な生活を送る生徒たちには大きな成果だった。最後の時間は、倫理基準について考え意見発表をしたが、「事実でないことは書かない。」「書いたことの根拠を明確にする。」「根拠となる記事は自分の足で目で見て確かめる。」「出所明確にして書く。」といった意見がすらすらと出てきた。今後、あふれる情報を適切に判断して取捨選択し、この倫理基準を守って発信してくれることを課題としている。

実践者名:都立八王子東特別支援学校 羽鳥 洋美