実践指定校実践例 2012年度

石巻「6枚の壁新聞」による情報伝達を考える

札幌市立屯田北小学校(さっぽろしりつとんでんきたしょうがっこう)

教科、科目、領域

小学校: 社会
学年 小学 5年
情報の中に生きる
石巻日日新聞社の記者が震災直後に壁新聞を書いた行動を通し、新聞には読む側と伝える側を結ぶ信頼と責任があることを理解する。
石巻日々新聞を拡大印刷して実際のものと同程度の大きさにして掲示した。
新聞活用学習

本単元は、大単元「くらしを支える情報」(13時間)【教育出版】の中の「情報の中に生きる」(5時間)の学習である。大単元全体を2つの活動群とし、活動群(1)(中単元1)では、新聞作成の事実を学ぶ。多くの情報がどう整理され、毎日の新聞となるのかを調べることで、情報を扱う人々の工夫や願いを感じさせる。活動群(2)(中単元2・3)では、インターネットにおけるネットワーク社会の中で、情報そのものを鵜呑みにせず、だれがどのような意図で発したものかを考え、取捨選択していく自分自身の態度に結びつけていく。

第5時

(課題把握)
・東日本大震災について写真等で当時の状況を説明する。
・東日本大震災についての新聞記事を読む。
・当時の住民にとって必要だったものが何かを考える。そこから、ライフラインとして「情報」に焦点化する。
(協働学習)
■住民はどんな情報が欲しかったのだろう
・小集団における交流学習を行う
・当時の住民が知りたかったことは何か?自分だったらと置き換えて考えいていく。
・情報を時間、場所、人物など、細分化していき必要な事柄を取り上げていく。
(問題解決)
■実際の壁新聞と比べてみよう
・実際に壁新聞に書かれている内容を分析していく。
・なぜ、このような内容になったのかを考える。
・当時の、その瞬間にわかる最大限の情報を伝えていることに気づく。
・その状況の中でも「速さ」「わかりやすさ」「正確さ」を守っていることに気づく。
■記者はどんな気持ちだったのだろう
・どんな思いで記者が壁新聞を書いたのかを考える。
・当時の記者の思いを語った新聞記事を読む。
(まとめ)
・このような現状であるからこそ、情報の3つの原則が重要となる。
・どんなときも、情報を伝えなければならないという記者の思いから、情報を伝えることの責任を考える。
・国民がどのような思いで、情報を活用するかを考える。

・指導の際には、児童の身内に被災者がいないか十分に配慮する。(児童理解)
・大災害の中、住民が欲しかった情報は何か?伝えられる情報はなんであったかを、学んできたことをもとに自分の意見をもたせる。(問いの醸成)
・子どもたちの考えを視点で分類し板書で位置づけ、価値付けする。(板書構成)
・考えや事実を関連づけ、記者が壁新聞をつくり情報を伝えたことの構造を明らかにする。(対象の構造化)

 東日本大震災を伝える写真や新聞記事を読み、当時の悲惨な状況を理解することができた。しかし、表面的な悲惨さだけで無く、もしも自分たちに同じような状況が起きた場合、何が困るのかを、仲間と交流しながら考え、ライフラインに気がついていった。そこから、情報が生活に必要不可欠であることに気づいていった。そこで、現場の記者は何を伝えようとしてのかを考えることで受け手と伝い手の立場で考えることができた。

半年間、新聞を配置することができ、子供たちも徐々に新聞に慣れていった。朝の会で新聞記事の話をしたり、授業でも新聞を扱う場を多く設定したりすることで、子供たちと新聞との距離が縮まっていった。言語活動の充実が言われる中、新聞を読む活動は、子供たちの読解力を鍛えることができる。辞書を手に取り、語句や漢字を調べることは、効果的な活動であった。北海道新聞社の出前授業も効果的で、次年度以降も新聞社の工夫や苦労を学ぶ学習、体験的な学習を進めていきたい。今後の課題としては、「実践」を積み上げである。NIE実践者が講師となって、教員集団で研修を行うことも効果的である。各新聞社や販売店が行っている「新聞記事ワークシート」などは、道徳などの時間に活用しやすく、全学年で取り組むなどできる。

実践者名:札幌市立屯田北小学校 朝倉一民