実践指定校実践例 2012年度

「泥だらけの衣服 洗い直して配達」 湊洋夫さんとお客さんをつなぐもの

長岡市立中之島中学校(ながおかしりつなかのしまちゅうがっこう)

教科、科目、領域

中学校: 道徳
学年 中学 3年
感謝の心が支えるもの 【内容項目 2-(6)】
お客さんに感謝し誠実に応えようとする湊さんと、湊さんに感謝の気持ちを表すお客さんの関係を知り、よりよい人間関係を築いていこうとする気持ちを培う。
同一の人物を取材した新聞を複数誌取り上げ、その人物の心情に深く迫ろうとする。
新聞活用学習

1時間扱い。
【導入】震災時の記憶は、生徒にとって風化されている部分でもある。写真によって、震災時の大変さや悲惨さを想起させる。

【展開】震災ならではの困難さに気付かせる。泥だらけの衣服を洗うことの大変さに気付かせ、苦労した湊さんへの感謝の気持ちを、ロールプレイによって感じ取らせる。


【終末】湊さんの生き方についての感想にとどまらず、中学校生活の中で、お互いが感謝することで気持ちよくなったことがないか、自身の行動につなげて振り返らせる。

第1時

【導入】
1 震災後の山田町を取材した新聞記事の写真を見て、絶望的な状況におかれていたことを知る。
【展開】
2 湊さんについての新聞記事(1)を読み、湊さんについて知る。
   湊洋夫さん(72)
   震災時:営んでいたクリーニング店が震災で全壊する。
  一週間後:預かっていた衣服を見つける。
       衣服を拾い集め、川で水洗いする。
       長男の家に保管する。
  今年6月初旬:中古の機械を買いそろえる。
         衣服を再度きれいにする。
         店を再開する。
    6月下旬:持ち主を探して衣服を無料で返却する。 

3 湊さんが「泥だらけの衣服 洗い直して配達」した理由を考える。

4 新聞記事(2)に記載されている、3の理由「長い間、ごはん食べさせてもらったお客さんです。責任をもってお返ししたい。」を読む。

5 湊さんの行動を支えている考え方を知り、湊さんの人物像に迫る。(責任感が強い、仕事に誇り)

6 湊さんがお客さんにクリーニング品を返す時に様子を、両者の立場で考え、ロールプレイで表現する。

7 湊さんとお客さんの互いの気持ちにあるキーワードを考える。(感謝、絆、…)
【終末】
8 学習を振り返り、自分に引きつけて考える。

複眼的な視野をもつことがなかなか難しい生徒でも、湊さんとお客さんとのクリーニング品のやりとりを実際に演ずることにより、両者の心情を考えたり、互いの感謝により支え合う関係が築かれていることを実感したりできると考えた。ひいては、今後、新聞記事を読む際にも、焦点となっている人物の心情を推し量ることにつながっていくのではと期待する。

Tさん「使命感を持って、仕事にひた向きに取り組む大切さを学びました。周囲への感謝の気持ちを忘れてはいけないことにも気付かされました。互いを思いやる人間関係が築けるよう、普段から心掛けていきたいです。」 Iさん「日常生活の中でも、人間関係には相手に対する優しさが必要なんだと授業で強く感じました。これまでは自分の意見を通すことが多かったけれど、これからは周囲のことを考えた行動をしていこうと思います。」

 新聞に触れることで、社会で起きていることに関心をもつ生徒が増えてきた。また、教科書や資料集には掲載できない、リアルタイムで起きていることについての情報を新聞記事によって補うことができた。新聞は時々刻々と変化する社会を映し出す、生きた教科書であると実感できた。さらに、新聞記事の内容は幅広いので、生徒が学習を深めるために、個々の関心に合わせて記事を探すのに便利であった。
 一方で、教えたいことに合わせて記事を探す際、内容が適合し、さらに生徒の関心を惹き付けられそうな記事を探すことが難しかった。これを解決するためには、まずは教師が日頃から新聞を読んでおくしかないだろう。新聞でニュースを俯瞰的にとらえられるのは、インターネットでもテレビでもできない利点である。積極的に利用したい。

実践者名:長岡市立中之島中学校 吉野佳奈子