実践指定校実践例 2012年度

「災害の現場と報道」 北部九州豪雨を新聞はどう伝えたか

昭和学園高等学校(しょうわがくえんこうとうがっこう)

教科、科目、領域

高校(高等専門学校を含む): 地理歴史
学年 高校(高等専門学校を含む) 3年
日本史A 近代の追及 「関東大震災と金融恐慌」
実際に災害現場にいた当事者としての視点で、水害の記事を読み、内容の検証を行う。また、取材を受ける側だった体験なども交え、報道全般の在り方にも考察を及ぼす。
実際に水害の現場に生徒が立ち会い、その後の復旧作業にも係わったという実体験を、新聞はどのような視点や切り口で報道していたのかを検証し、報道とは何かを考えさせる。
新聞機能学習

第3節 第二次世界大戦と日本
 恐慌の嵐が吹き荒れる…1時間
 関東大震災と金融恐慌…1時間
  「災害の現場と報道」(NIE実践授業)…本時1時間
 日本が、第一次世界大戦後の経済不況で苦しむ中起こった関東大震災は、その後の日本経済を大きく悪化させ、恐慌を引き起こす大きな原因となった。今回は、その関東大震災を扱う単元中に、昨年7月に発生した、北部九州豪雨とその報道について絡め、災害現場に立ち会った人々の意識も考えながら授業を行った。

 

第1時

(1)意見を出しやすいように班ごとに分け、机も分けて座らせる。
(2)授業の趣旨説明を行い、数ヶ月前の北部九州豪雨の被害などを話し、当時の状況を思い出す切っ掛けを与える。
(3)パワーポイントで、災害時のようすを当時撮った写真で時系列を追って振り返り、更に詳しく思い出す。
(4)災害(北部九州豪)発生翌日の各紙の記事を各班に配布し、その内容を詳しく読ませる。
(5)記事を読んでの感想や意見などを班ごとに話し合わせ、紙に書いてまとめる。
 ※内容に事実との食い違いは無いか、疑問に思う点は無いかなど、批判的な視点も盛り込ませた。
(6)各班の代表に発表させる。
(7)生徒から出てきた感想や意見の中から、幾つか拾い上げ、災害の現場に立ち会った側(中にはその後取材を受けた者もいる)として、新聞だけではなく、テレビなど、他のマスメディア含めた報道全般の在り方について考えを深めていく。

 北部九州豪雨の被害で、実際に自宅が床上浸水したり、写真や家具など思い出の品を失い、経済的にも精神的にも大きな被害を受けた生徒もいる。当時の写真を見るのが辛いという感情も十分考えられたので、被害を受けた生徒には、事前に授業の趣旨を説明し、実施してもよいか確認した上で行った。

以下は生徒の感想の一部
 自分たちが、「凄かった、怖かった、大変だった」というようにしか書けないことを、新聞は(第三者に)分かりやすく淡々と伝えていることに改めて気がついた。
 いろんな人の話(インタビュー)が出ていて、その人の気持ちが伝わってきてリアリティーがわいた。
 遠くの親戚から、テレビを見たといって(心配して)電話やメールがたくさん来た。

昨年は、「歴新聞の作成」を行い、記事を書く側、取材をする側としての視点や注意点を学ばせた。その上に立って、今回は当事者として、取材を受ける側、報道される側の視点で新聞報道を再検証し、内容の妥当性や取材のようすを振り返った。この両面の視点で報道を考える事は、メディアリテラシーを考えさせる上で大きな示唆となったのではと思う。
 ただ、NIE実践授業は、毎回授業計画(単元計画)の中で単発に実施することになってしまうので、他の単元の中で孤立し、評価も出しづらい。もし、NIEを発展させるのなら、総合学習の中で単元項目として入れていけば、良いのではないかとも思う。

実践者名:昭和学園高等学校 齋藤 貴志