第9回 アメリカ(2005年3月)
13道府県17人の実践教師が参加し、ワシントンDC、ニューヨークを訪問し、学校の授業を参観、新聞社を訪れた。新聞社等から5人が同行した。
視察概要
※「NIEニュース」第40号(2005年7月15日発行)掲載
今回の視察団は、3月27日から4月3日までの日程でNIE発祥の地である米国を視察した。訪ねた学校はCarl Sandburg Middle School(カール・サンドバーグ中学校)、Arlington Science Focus School(アーリントン・サイエンス・フォーカス小学校)、 KIMA-Public Charter High School(キーマ・チャータースクール)。このほか、ワシントン・ポスト社を訪問し、NAA財団のジェームス・アボット副理事長から米国のNIE事情について話を聞いた。
楽しみ考える授業
学校を視察して印象的だったのは米国の学校がとても自由な雰囲気のなかで授業をしていることだった。先生の指導で新聞を手に活発な討論をしている生徒の姿は日本と共通しているが、米国と日本では教育制度が異なるため同じ手法を日本で取り入れることは難しいだろうというのが率直なところであった。
カール・サンドバーグ中学校は、生徒数約1,000人。毎日60部のワシントン・ポスト紙が届く。「マイノリティーの記事に印をつけて」という先生の指示で生徒が新聞に×印をつけていく。「もしこの記事がなければ少数者のことは分からないでしょう」と、投げかけてなぜ「報道の自由」が大切なのかを考えさせる授業をしていた。イートン教頭は「新聞には教科書にない現実があるから生徒たちも授業を楽しんでいます」と話した。
アーリントンにあるサイエンス・フォーカス小学校の生徒数は420人。リーガン先生は5年生3クラスの児童を対象に2週間に1回、ワシントン・ポスト紙を使った授業を行っている。17人の児童全員に新聞広告に対する意見を言わせた後、セクションごとにどんな広告が載っているかを調べていく。そして、ビジネス欄には銀行の広告が多い、スポーツ欄には車、といった具合に子どもたちに新聞を通して「発見」させていった。
米国NIEの特徴
ワシントン・ポスト社NIE担当部長のマーガレット・カプローさんは、「わたしたちの仕事は先生方に会って、どんなプログラムが必要であるかを聞きそれに応じたプログラムを提示することだ」と話す。同社では学校向けに新聞を毎日4万5千部配達しているほか、先生が新聞を使いやすいよう、このようなプログラムを開発している。
新聞を含めた教育プログラムは無料で先生方に提供されるが、新聞社はこうした経費を主に「バケーションドネーション=休暇で新聞を止めた分の購読料を寄付すること」で賄っているという。このほか、NIE用の別刷りは企業がスポンサーになって作成されるが、宣伝の色合いは全くない。これらは米国NIEの特徴であろう。
米国の新聞社にとってNIEは、(1)将来の購読者を育てる(新聞を読む習慣を身につけさせる)、(2)発行部数を増やす――という側面はある。しかし、地域に有力紙が1紙という米国では地域社会への公共的な事業という意味合いもあり、NIE担当者はそうした仕事に誇りを持っているようだった。
視察の中でジェームス・アボット氏がNIEの本質を次のように語っていたのが強く印象に残った。
「新聞を授業で使うときは必ず楽しくないといけない。なぜなら若い人は新聞がそれほど好きではないからだ。しかし、そういう若い人でも新聞を開けばなにか興味を抱く記事を見つけることはできる。生徒に教科書を持って行っても開かないが、新聞だったら開く――それだけ新聞には力があるということだ」
日程
3月27日(日) |
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3月28日(月) |
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3月29日(火) |
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3月30日(水) |
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3月31日(木) |
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4月1日(金) |
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4月2日(土) |
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4月3日(日) |
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