第6回 ノルウェー(2001年3月)
13都道府県16人の実践教師が参加し、オスロ、ベルゲンを訪問し、学校の授業を参観、新聞社を訪れた。
視察概要
※「NIEニュース」第23号(2001年5月31日発行)掲載
海外NIE事情視察団の派遣は、米国、英国、オランダなどに続いて6回目。毎年、小・中・高校のNIE実践者等を対象に実施している。今回はノルウェー新聞発行者協会(NAL)が快く視察団を受け入れてくれ、NIE先進国ノルウェーを訪問した。
立憲君主制を敷く「ノルウェー王国」の国土は38万6,958平方メートルでほぼ日本と同じである。人口は約440万人で、国土面積の割に人口は少ない。新聞は約160紙あり、そのうち約50紙が発行部数11,000部以上。1日のメディア接触時間は長いものからテレビ、ラジオ、音響媒体(CDやカセットなど)と続き、新聞はその次で、40分を切る。発行形態は、いわゆる日刊紙が約60紙ほどで、1週間に2~5回発行するものは約90紙ある。部数の約80%は宅配で、人口一人あたりの発行部数も日本と並んで世界のトップクラスにある。
NALが推進するNIE
ノルウェーでのNIE活動はNALを中心に1971年にスタートした。現在、NALではヤン・ビンセンス・ステーンNIEマネジャーのもと、8地域にNIEオフィスがあり、34人の「NIEインストラクター」、155人のスクールコンタクトパーソンがその傘下で活動している。同協会は、調査活動、教師・両親への働きかけ、新聞社見学のほか、「NIEフォーカス・ウイーク」として第3、第6、第10学年の生徒へ新聞やワークブック(就学年代別に4冊を作成)の提供を行っている。
新聞を指導要綱に位置づけ
ノルウェーは97年に教育制度改革を行っている(Reform 97=リフォーム97)。指導要綱(Curriculum Guidelines in Reform 97)にはNIEの推進について直接的には書かれていないものの、新聞を教育現場で使うことにふれており、こうした文言が同要項に載ったことはひとえにNALの尽力によるものである。
就学児童についてだが、義務教育となる初等段階=小学校と前期中等段階=中学校(primary and lower secondary education、6歳から15歳まで)はおおまかに3段階に分けられる。準備段階から4学年まで、5学年から7学年、そして8学年から10学年までである。
小学校は第1学年から第7学年までで、日本に対比すると、第2学年が小学校1年生にあたる。また前期中等段階=中学校は第8学年から10学年であり、義務教育である初等・前期中等段階をあわせ、3,200校、55万人の児童・生徒数である。
さらに上級中等段階=高等学校(upper secondary education、16歳から19歳)は730校、22万人の生徒がおり、さまざまな職業選択のためのコースも用意される。
地域と学校を結ぶコンタクトパーソン
児童と新聞社、またNALを結びつける役割を果たしているのがスクール・コンタクト・パーソンである。訪問したヘムセダール・バーネー=ウングドムススコーレ(中学校)の教師であるエンブリック・カスレゴール氏は、1週間のうち4日間を教師として勤務。残りの1日は、地元紙ハリングドゥーレン紙でスクール・コンタクト・パーソンとして県内の小・中学校と新聞社の橋渡し役を勤める。
ベルゲンで訪れたヘーレン・スコーレ(小学校)ではNALのワークブックを利用した授業を見学した。第2学年のクラスではワークシート上に数字の倍数を紙面から探し出して切り抜き・張る作業を行っていた。
また同低学年用ワークブックは、まじめな顔、笑っている顔を紙面からクリッピングして張ったり、アルファベットや動物を選んで張ったりと、算数から国語までさまざまな教科をカバーする内容となっている。「子どものやる気と自主性をのばす現実に基づいた教材である」と教員からも新聞の利用には一定の評価がある。
折しもハラール国王の訪日時であり、日本への関心も高まっていて、同校では視察団の先生方が子どもたちから日本についての質問を受けたり、また日本ならではのパフォーマンスを披露したりと、楽しい交流のひとときが持たれた。
メディア・ハウスを目指して
訪問した新聞社ではいずれも「メディア・ハウス」への変貌を模索していた。テレビ、ラジオ、インターネットなどを包含し、地元に密着した活動を展開しようというもの。ベルゲン・ティーデンネ紙は輪転機など新聞製作設備を郊外に移しており、市内にある社屋はコンピューターセンターの様相を呈している。2000年にできたばかりの学生のためのニュー・メディア・センター(new mediacentre for students)はNALが目指す「批判的な視点を持つ読者」を育てるための核となる施設であり、子どもたちは紙面づくりを疑似体験できる。こうした施設は他社でも将来の読者を自社につなぐ機会としてとらえているようで、ドランメン・ティーデンネ紙でも新社屋(New Media House)に読者が紙面づくりに参加できるような「Adventure Centre」を設けることを計画しているという。
今に興味をもたせる
NALのNIEマネジャーであるヤン・ステーン氏はNIEの目的として次の2点を挙げていた。「批判的な視点を持つ読者を育てる」(critical reader)こと。また「進んで読む読者を育てる」(active reader)ことである。これらをおし進めていくには「今を基盤にものごとを考えさせることが必要」であり、紙面等を通じて「現在起こっていることを知り、そこからインスピレーションを得る」ことで、ますます「その背景が知りたくなる」――つまりもっとよく読みたいという、さまざまな可能性を秘めた読者が誕生するのである。それには「今に興味をもたせることが絶対必要」である。
ノルウェーのNIEは地域に根ざし、教育行政にも影響を及ぼすなど成熟期を迎えていると言える。
参加者の感想から
- 新聞・教育・社会が良い意味で密接に影響しあう――NIEの大きな可能性に改めて気づかされた
- NIE活動に国全体で取り組んでいる様に感銘を受けた
- (スクール・コンタクト・パーソンの存在には)新聞社と学校との直接的なつながりを感じた
- ノルウェーではNIEのすそ野の広がりを感じた。日本でも新聞の活用方法をさらに研究していけば、教科や総合的な学習の時間において有効な教材の一つとして認められていくのではないか
- NIEの着実な定着ぶりがうかがえた
- 日本でも、総合的な学習の時間など、教えられるだけの受け身の学習から、生徒自らが進んで学習に取り組む学習スタイルへの転換が求められている。ノルウェーでの活動をそのまま日本にあてはめることは難しいが、地域の新聞社と積極的にかかわるなど、同国で学んだことを少しでも本年度のNIE活動の実践に生かしたい
- ジャーナリストに関心を持った子どもたちが増えることは、活字離れの進む日本の若者を変えるきっかけとなるはずである
日程
3月24日(土) |
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3月25日(日) |
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3月26日(月) |
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3月27日(火) |
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3月28日(水) |
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3月29日(木) |
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3月30日(金) |
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3月31日(土) |
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