第15回いっしょに読もう! 新聞コンクール受賞作

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福岡県 福岡県立東筑高等学校 3年 柴田 深冬さん

意見を聞いた人:母

記事見出し

広がれ コンサート手話通訳(西日本新聞 2024年1月23日付朝刊)

授賞理由

柴田さんは、応援しているアイドルのコンサートに行くことを日々の励みにしている。そうした中、「コンサート手話通訳」という見出しが目に飛び込み、聴覚障害を持つ人がコンサートを楽しむには高い障壁があることを知った。

「全ての人にコンサートを楽しむ権利がある」という母の言葉に、障害者の願いに寄り添うための環境整備の必要性を感じた柴田さん。全ての人に趣味や娯楽を楽しむ権利があることに思いをはせ、将来の夢である工学の道に進んだら、障害を持つ人々の支援に貢献したいと考えた。

コンサートという自分にとって身近なテーマを取り上げた記事から、障害者を取り巻く課題について理解を深め、工学を学ぶ夢を持つ自分や社会ができることについて思考を深め、提言している点が高く評価された。

(1) 記事を選んだ理由、記事を読んで思ったこと、考えたこと

大好きなアイドルのコンサートに行くことが私の生きがいだ。会場での鳥肌が立つような高揚感、日常を全て忘れての大興奮。年1、2回のこのご褒美があるから日々頑張れる。そんな私の目に飛び込んできたのが「コンサート手話通訳」という見出しだ。今まで会場で手話の方を見たことはない。記事を読み進めて気付いたのは、これまで聴覚障害者の方がコンサートに足を運ぶ状況について、想像したことすらなかったということだ。

(2) 家族や友だちの意見

母に記事を見せると、「聴覚障害者の方が楽器や空気の振動で音楽を楽しむ姿をテレビで見たことはあったけれど、コンサートについては思いが至ってなかったな。コンサートの手話通訳は認知度も低く、仕事として確立するにはまだまだハードルが高そうね。全ての人にコンサートを楽しむ権利があるはずなのに」とため息をついた。

(3) 話し合った後の意見や提案・提言

「全ての人にコンサートを楽しむ権利がある」という母の意見を聞きながら、私の将来の夢との関わりを考えた。私は将来、工学の道に進みたいと思っている。大学の体験入学をきっかけに、障害をもつ方を支援する器具やロボットの開発に興味をもったからだ。障害者差別解消法が改正され、「合理的配慮」が義務付けられたことで、社会の状況は改善するかもしれない。しかし、どんなに法が整備されても、障害をもつ方の願いや苦悩に耳を傾け、思いをはせる努力をしなければ、彼らに寄り添った本当の配慮とは言えない。趣味や娯楽は人生を豊かにするもので、楽しむ権利は全ての人にあるはずなのに、そうではない現実がある。それは環境の整備で克服できるハンディだと思う。誰もが公平に楽しめる幸せな社会の実現には、社会全体の理解と強い意志が不可欠だ。その一歩に、私は夢の実現を通して貢献したい。社会を変えるための使命と役割について、改めて考えていきたい。