第14回いっしょに読もう! 新聞コンクール受賞作

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東京都 恵泉女学園中学校 3年 大作 知穂さん

意見を聞いた人:父

記事見出し

豊かな海と 悩み歩んだ 処理水24日にも放出(朝日新聞 2023年8月22日付朝刊)

授賞理由

東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出を前に、地元の漁師たちが落胆しているとの記事を読んだ大作さん。海の恵みを受ける一人の人間として胸を痛めた。

漁師の危惧、消費者の不安、政府の決断――いずれも理解できると父は言う。三者それぞれの立場や思いがある。大作さんは、自分が漁師の視点でしか考えていなかったことに気がついた。多様な視点に気づき、風評被害を生み出すか否かは消費者の行動次第ではないかと考えるに至った。

自分には関係ないと思いがちな問題に正面から向き合い、根拠のないうわさを信じたり、ネット上で広めたりしないなど、自分たちにできることは何かを提言した点が高く評価された。

(1) 記事を選んだ理由、記事を読んで思ったこと、考えたこと

「少しでもいい魚を届けたい」と、手間をかけて捕った魚が、自分たちだけではどうにもできない理由によって、食べられずに捨てられてしまう。そんな悔しい経験をした漁師さんが、また魚が売れなくなるのかと肩を落とす姿に私は心を揺さぶられた。私がこの記事を選んだ理由は、この問題が、海の恵みを受けている一人の人間として、とても他人事とは思えなかったからだ。なにか私にできることはないだろうか。

(2) 家族や友だちの意見

父は「工夫して生計を立てている漁師の落胆の気持ちも、健康のためより安全そうな魚を買う消費者の気持ちも、ずっと処理水を保管できない政府の気持ちもよく理解できる。大切なのは、現状を受け止め、様々な立場の人と対話を進めること。また、想定通りでない時、柔軟に方向修正をしていくことではないか」と言っていた。

(3) 話し合った後の意見や提案・提言

私は父の言葉に納得した。私はこの記事を読み、地元の漁師、消費者、政府と三つある視点の中で、漁師の立場しか考えられていなかったことに気がついた。私は、処理水の海洋放出に強く反発している人たちがいる状況のまま、結局放出することになり、とてもかわいそうだという気持ちだった。しかし、父の話を通して、かわいそうだと思うような状況を作り出すか否かは、私たち消費者にかかっているという考えに変化した。よく記事を読むと、地元の漁師が反発している事柄は、処理水の放出自体よりも、風評被害を受ける可能性である。この問題の構造は「処理水を流したい政府とそれに反発する漁師」ではなく、「風評被害を危惧する漁師とその原因になる可能性がある消費者」ではないだろうか。だから、日々海産物を食べる消費者全員が、根拠のないうわさをネット上に書き込んだり、それを信じて広めたりするなどのことをせず、他の人のことを考えた行動を積み重ねるべきだ。