第11回いっしょに読もう! 新聞コンクール受賞作

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土佐中学校(高知県) 3年 三浦 友愛(みうら・ともえ)さん

意見を聞いた人:母

記事見出し

容疑者救命 京アニ事件主治医の記録~上 『生きて罪に向き合え』真相究明へ道(高知新聞 2020年5月28日付朝刊)
容疑者救命 京アニ事件主治医の記録~中 緊張から体調に異変(高知新聞 2020年5月29日付朝刊)
容疑者救命 京アニ事件主治医の記録~下 無邪気な言動に苦悶(高知新聞 2020年5月30日付朝刊)

授賞理由

2019年の京都アニメーション放火事件で、容疑者が事件を起こした動機や真相を知りたいと思った三浦さんは、容疑者の救命に携わった主治医に関する連載記事を読んだ。

被害者を救いたいとの思いとうらはらに、容疑者の救命に携わることになった医師。葛藤しながらも力を尽くした姿に感動した三浦さんは、孤独だったかもしれない容疑者の過去に思いをはせ、社会の片隅に置き去りにされる人、犠牲になる人を出してはいけないと力を込める。そして、限りある命の可能性を信じ、全力を尽くせる人間になりたいとの決意を示した。

時間の経過とともに社会の記憶が少しずつ薄れるなか、関心を持って連載記事を読み、母との対話で得られた意見やALS患者嘱託殺人事件についても思索を深め、命の重みについて考えた。記事を通じて現代社会が抱える問題の本質を捉え、自らの生き方への決意につなげた点が高く評価された。

(1) この記事を選んだ理由と、記事を読んで思ったこと、考えたことを書いてください

私は以前、報道で容疑者がストレッチャーで移送される場面を見てその痛々しい顔面に思わず目を背けてしまった。結果として一生の傷を負うことになった事件の動機や真相を知りたくて、連載を読むことにした。読み進むなか「生きて罪に向き合え」という医師の言葉からも分かるように、最後まで容疑者の命・人生を思いさまざまな葛藤と戦いながらも、高度な技術で心身を救命した主治医は素晴らしく、強くて優しい心の持ち主だと感動した。

(2) 家族や友だちなどにも記事を読んでもらい、その人の意見を聞きとって書いてください

母は「絶命寸前の容疑者救命の責務のなか、究極に揺れた心情は、医師として生と死のはざまの命に真に対峙(たいじ)してきたからこその生きざまだと思う。不条理に断ち切られた36人の尊い命と遺族の無念の人生に、命の限り向き合い罪を償わせようとした主治医。その容疑者の命と人生に寄り添い尽力した医師の姿は尊いものだ」と言った。

(3) 話し合った後のあなたの意見や提案・提言を書いてください

7月、ALS患者嘱託殺人事件で医師2人が逮捕された。命と向き合う同じ立場の医師でありながら、この二つの行為は対極にある。日本での安楽死の是非は難しいが、このALS患者は死ではなく、生きる道もあっただろうに命を絶たれた。対してこの主治医は瀕死(ひんし)状態から救命し、生きる道筋まで示した。残酷な社会だ。「僕なんか底辺の人間。生きる価値がない」と自虐する容疑者の言葉から、成育歴には孤独な過去があったと思う。殺人事件を起こすまで社会の片隅に置き去りにされ、暴挙は止められなかった。そんな社会の落とし穴にはまる人が増えないように、犠牲になる人を出してはいけない。状況に応じて何度も声を掛け、信頼関係を構築し、小さくても生きる意義を感じられるように、すくい上げていかねばならない。自分の死に方は、他人(ひと)に決められるものではない。そして限りある命に向き合うとき、その命の1%の可能性を信じ、全力を尽くせる人間になりたい。