第7回いっしょに読もう!新聞コンクール
最優秀賞(小学生部門)・須藤貴海さんと出会った記者の思い

伝わった「ただいま」という言葉の重み

 「防災とは『ただいま』を言うことです」

 この言葉がずっと心にのこって消えなかったという。最初は「正確な判断をしていれば74人は助かったはずだとくやしい気持ち」になり、「子どもたちがとてもかわいそう」との感想を持った。

 だがその後、お母様から「つらいだろうにどうして佐藤さんはこのできごとを伝え続けているのか、貴海に考えてみてほしい」と言われた。

 そこで今度は佐藤さんの気持ちになって記事を読み直したところ「『悲しい』『かわいそう』と思うだけでなく、このことから学んだことをこれからに生かしていくことで、亡くなった子どもたちに意味を与えようとしている」と思うようになったという。

 以来、何気なく発していた「行ってきます」と「ただいま」が須藤家の合言葉になったそうだ。ふだん何気なく発している言葉だが、小さな言葉を通して、暮らしの中に少しだけ防災を意識することができれば、大きな違いになるはずだ。あの日多くの人が言えなかった「ただいま」という言葉。佐藤さんの取材を通し、その重みを私も感じていた。

次のページ >> くり返し、一から伝える意義