第7回いっしょに読もう! 新聞コンクール受賞作

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(愛知県)椙山女学園高等学校 2年 森 亜理朱(もり・ありす)さん

意見を聞いた人:父

記事見出し

「都合よく代弁しない 死者をどう記憶するか(上)/倫理に不可欠な要素 同(中)/尊重し、ともに生きる 同(下)」
(中日新聞2016年6月28日付、7月5日付、7月12日付、各朝刊)

授賞理由

「死者をどう記憶するか」。目を引く見出しが、昨年母を亡くした愛知県の森さんの心を捉えた。南山大学准教授による連載の初回は、オバマ米大統領が5月、広島を訪問し、戦没者へ哀悼の意を示したスピーチを取り上げた内容。大統領が死者の声を代弁する形で自分自身の主張を語ったことに対する筆者の憤りに共感した。

3回にわたる連載を読み、父と話し合い、死者に対する認識をさらに深めた森さん。この世界は、今を生きる人に加え、過去を生きた死者たちが重ねていくものなのだと実感し、父と二人、母の遺影に手を合わせ、懸命に生きることを約束した。さらに筆者を訪ねて話を聞き、母が残した言葉を今後の人生に生かすことを決意した。

高校生にとっては難解と思われる寄稿を読み込み、自分と向き合い、深く思索している点が高く評価された。過去を振り返る必要性への気付き、「死」から「生」を考える姿勢などは、多感な時期に哲学する大切さを感じさせる。筆者を訪ねた行動力もすばらしい。

(1) この記事を選んだ理由と、記事を読んで思ったこと、考えたことを書いてください

「死者をどう記憶するか」。この見出しは昨年母を亡くした私の目を捉えた。母は「人にやさしく」と一言だけを残して安らかにこの世を去った。この記事の中の死は、決して安らかなものではなかった。広島と長崎で原爆に焼かれた死者たちの声を都合よく改変し、死者の口を借りて自分の主張をスピーチしたオバマ大統領への憤りに共感した。死者たちのおぞましい嘆きに耳を傾けることが大切であると感じた。

(2) 家族や友だちなどにも記事を読んでもらい、その人の意見を聞きとって書いてください

父は何度もこの記事を読み返し、素晴らしい視点からの論評だと賞賛した。死者たちの声を遺品や生前の姿からうかがうことは可能かもしれないが、皆が同じように平和を望んだとは信じがたい。戦争によって生み出された犠牲者たちの無念を繰り返さないことが、唯一生きている人間にできることなのかもしれないと父は言った。

(3) 話し合った後のあなたの意見や提案・提言を書いてください

「死者の声を聴く」「死者の痕跡を生きる」「生老病死の先達」、全3編からなるこの記事は、死者に対する認識をさらに深めるものとなった。死者を尊重し、共に生きるとは、「死者を正しく記憶する」ことであり、それが死者との共感につながることが理解できた。原爆の焼け野原が活気ある街に復興したように、この世界は今を生きる人に加えて過去を生きた人、すなわち無数の死者たちが重ねていくものだということに実感を持った。私と父は、母の遺影に手を合わせ、まだ経験したことのない死が訪れるまで懸命に生きることを約束した。私は深い関心を抱いたこの記事の筆者を訪ね、人生と死をテーマにお話を伺った。「人生とは滝つぼに向かって後ろ向きで舟をこぐようなもの。その間に積み重ねたものをとどめたい」と語ってくれた。これから私は母の唯一残した「人にやさしく」を周りの人だけではなく、死者にも向けるようにしていこうと思う。