第6回いっしょに読もう! 新聞コンクール受賞作

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沖縄県北中城村立北中城小学校 6年 瀬底 蘭(せそこ・らん)さん

意見を聞いた人:母

記事見出し

「国策 民意を侵害」沖縄タイムス 2015年1月16日

授賞理由

「人の鎖」で立ちはだかる警察官に、「守るべきは県民じゃないのか」と怒声があがる。沖縄県の瀬底さんは、警察官の父親が初めて、名護市辺野古の新基地建設現場へ警備に赴いたそのときの記事に強い衝撃を受け、大切に保管していた。
 同じ県民の警察官と市民が、まるで敵味方のように向き合わなければならない沖縄の現状。この記事を読んで涙を流す母親は、父親の複雑な心情を察してのことかと思ったら、そうではなかった。母親の涙は、記事の最後の17文字「警察官は目頭をこすって空を見上げた」への感謝の気持ちからだったのだ。瀬底さんはそのとき、気付いた。新聞は出来事をただ伝えるだけではなく、人の心を救う力があることに。
 賛否論に陥りやすい沖縄基地問題。その中で瀬底さんは、最後の17文字を通して記事に書かれていること以上のものを読み取り、新聞の別の価値や役割をそこに発見した。その気づきは、NIEの醍醐味を感じさせるものと高く評価された。

(1) この記事を選んだ理由と、記事を読んで思ったこと、考えたことを書いてください

父が初めて、応援で辺野古警備に行ったときの記事でした。ショックでした。私の父の職業は、警察官です。県民の平和な暮らしや安全を守りたいという思いで警察官になったそうです。そんな父がどんな気持ちで、自分が守りたい県民と向かい合い、立ちはだからなければならなかったのか、どうして、ただ平和を願うだけのはずの沖縄県民同士が敵味方のように向かい合わなければならないのかと考えたくて、この記事を選びました。

(2) 家族や友だちなどにも記事を読んでもらい、その人の意見を聞きとって書いてください

母はこの記事を何度も読み返しながら、泣いていました。それは、私のように父の複雑な気持ちを思ってや、この沖縄の現状への悔し涙と思ったら、違いました。この記事は、特別なんだということ。本人たちや私たち家族の悔しさや苦しい気持ちを、記事の最後の締めくくりの17文字が救ってくれた感謝の涙なんだと答えてくれました。

(3)話し合った後のあなたの意見や提案・提言を書いてください

私はこれまで、新聞は記者が現場に行って実際に目の前で起こったことをただ伝えることが、新聞の役割だと思ってきました。だからこの記事も、制服を脱げばずっと基地に苦しんできた同じ県民には変わりない警察官でも辺野古での様子からすると、県民の敵のように書かれても仕方がないと思いました。でも「警察官は目頭をこすって空を見上げた」、この一文を加えてくれたということは、その記者は、警察官たちがいろいろな迷いや葛藤があってそこに立っていることを分かってくれたかもしれない。県民として基地反対でも声に出して反対と言えない人たちがいる沖縄の複雑な現状を伝えたいと思って書いてくれたかもしれないと思うと、新聞は伝えるだけじゃなく、母のように人の気持ちを救う力もあるのだと気づき、私も感謝でいっぱいになりました。一日も早く県民同士が向かい合わなくてすむような、本当の終戦が沖縄に訪れるよう心から願い、考えていかなければと思えたありがたい大切な記事でした。