パネルディスカッション 子どもが高まるNIE 地域や学校の連携を視野に

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総合司会 高田喜久司氏 (上越教育大学副学長)
パネリスト 宮薗 衛氏 (新潟大学教育人間科学部教授)
飯原清仁氏 (新潟市立桃山小学校教諭)
蟻塚宰子氏 (新潟県立豊栄高等学校教諭)
近 昭子氏 (新潟県小中学校PTA連合会)
渡辺英美子氏 (新潟日報社編集委員)

NIEの有効性と意義

高田 NIEの有効性、意義と問題点についての考えは。

飯原 実践を始めた当初、廊下に新聞コーナーを作ったが、利用する児童はほとんどいなかった。そこで、学校全体の取り組みとすべく新聞委員会を作り、新聞の管理も子どもたちにさせた。すると、次第に意識するようになり徐々に利用し始めた。

課題としては「言葉の壁」がある。小学生には読めない漢字が多く、それを一人ひとり教えていては授業にならない。教師が工夫する必要がある。

蟻塚 新聞スクラップを作り、リポート作成といった調べ学習を中心に実践しているが、最初は生徒にとって苦痛だったようだ。しかし、やり方が分かってくると、「調べるのが楽しい」「もっと調べたい」という生徒が出てきた。これが一番の驚きだった。

新聞を仲立ちに生徒と会話ができるようになった。新聞は教科書だけでは生まれないテーマを自分で発見できる。

 新聞は学習の情報源であるだけではなく、自分の生活が社会と密接していることを実感させてくれる。新聞をとおして家族の会話が増える。現在はさまざまな情報が飛び交っており、そこから取捨選択しなければならない。学校だけでなく家族間の会話でも身につけさせるべきものだ。

地域が身近に感じられる子どもたち

渡辺 これまで多くの実践を見た中で、児童・生徒にとって地域・環境といった抽象的なものがNIEを通じて身近になると感じた。教育ボランティアの人が話したりすることで、教師や親以外の大人と接点ができ、コミュニケーションの取り方を学ぶことができる。地域との媒介となるのがNIEだ。

宮薗 NIEのためのNIEは長続きしない。新聞社による複数の新聞提供によるNIEは、それ自体は魅力的な取り組みだが、同時に、提供されないとNIEができないという「新聞社依存」の体質が一部に見られたことも事実だ。教師自身がなぜ新聞を活用するのかしっかりと考えたうえでNIEを実践しなければならない。

活字文化とNIE

高田 活字文化とNIEの関連についてはどう思うか。

飯原 子どもたちはもともとは読書が大好きだ。しかし、高学年や中学生になると徐々に本を読まなくなる。子どもたちにとって新聞は大人が読むものという意識がある。いつかは読めるようにならなければと考えているので、その場を教師が設定してやり、意欲を高めてやるのがいい。

蟻塚 高校生レベルでは、上手に多くのメディアを組み合わせて教えるべきだ。多くの情報をさまざまな視点から見ることで、生徒に「なぜ?」という思いがでてくる。その時がチャンスだ。テーマを決めて調べさせると、自然に活字に目がいくようになるし、効果も上がるだろう。

渡辺 2002年の新聞記事感想文コンクールで、最優秀賞に選ばれた小2の女の子が「しんぶんはびっくりばこ」と書いてくれた。新聞は情報の玉手箱であり、世界に開かれた窓だ。新聞を読むことで社会に関心を持ち、いろいろな考え方、視点があることを知ったうえで自分の考えを持ってほしいと思う。

宮薗 メディアの多様化が進むことは避けられないが、言葉・文字により考え、それを伝えることの大切さは決して失われていない。

新聞の読み比べにより、事実のとらえ方の違いなど新聞社の報道内容を比較し、それらを吟味する力を育てることは、より良い民主的な社会の形成者として必要な健全な批判力を育成することにもつながる。

地域の発展に貢献するには

高田 地域の発展に貢献するNIEの可能性について聞かせてほしい。

飯原 これまでの実践で教育ボランティアの方に協力してもらったり、地域の人をゲストティーチャーに招いたりしたことで、子どもたちは新たに地域とのコミュニケーションを発見した。家庭や地域を学習に取り込むことによって、「親子で話し合う時間が増えた」という声も聞くし、紙面でそうした活動が紹介されることで、地域の人たちにいま学校で学んでいることを発信することができる。そうすることで地域の理解も深まる。

蟻塚 進路を考えることは自分に何ができるのか考えることであり、広げていけば自分は地域にどんな貢献ができるのか考えることにつながるのではないか。

 子どもの健やかな成長を考えたときに、「家庭、学校、地域で子どもを育てる」ことが大切だ。地元の祭りに参加したり、学校での地域の宝探しなどを通じて、「この街が好きだ」という気持ちを大事にして、地域の情報を発信することに子どもがかかわることが可能ではないか。

文化創造・参加型のNIE

宮薗 新潟県のNIE活動の一つの特徴は、教室に新聞を持ち込む「新聞利用・活用型NIE」と「文化創造・参加型NIE」が複合して展開していることだ。前者はこれまでも多くの学校で行われている。後者は学校を社会に開く「社会参加能力」の育成につながる。

新聞には地域に関する記事がたくさん載っているが、その中には地域の問題点や意見が分かれるテーマなど扱いが難しいものもある。そうした問題を扱う際には、ある程度の寛容性が必要だ。大人の考えを教えるだけではなく、子どもと大人の両方の立場で考えてほしい。

渡辺 NIEを地域コミュニティー作りに利用してほしい。NIEが地域のきずなの役割を果たしている。学校を核にした地域作りや地域文化の発信を進める意味でも、NIEに取り組んでもらいたい。そうして、NIEによって地域がどう変わったかを学術的に検証することも必要だろう。

「NIEニュース」第37号