第21回NIE全国大会大分大会 特別分科会報告
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- 特別分科会報告 学校図書館とNIE
学校図書館とNIE
登壇者: | 中津市立山口小学校・松本俊也教諭 |
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中津市立東中津中学校・長松涼子教諭 | |
中津市立三保小学校・北﨑佳百学校司書 | |
大分県立爽風館高等学校定時制昼間部・志賀祐子主幹司書 | |
司会: | 中津市教育委員会・田邉玲子指導主事 |
学校図書館とNIE ~子供と新聞をつなぐ架け橋~田邉 玲子指導主事
子供たちは、これまでにない質と速さをもって変わる世の中を、自立した人間として生き抜いていかなければならない。そのために学校において、子供たちにどのような資質・能力をどのような方法で育んでいくのか、新たな視点も加えながら不断の授業改善が行われている。
その際に新聞を、教科書を補完する効果的な教材とし、子供たちの成長につなげるには、授業者(教師)はもちろん学校図書館と学校司書の存在が欠かせない。学校図書館に新聞閲覧コーナーや記事の切り抜き掲示板を設置したり、スクラップ帳を作成し配置したりすることで、図書館の読書センター、学習センター、情報センターとしての機能はより充実する。家庭での新聞購読の有無に関わらず、子供たちが日常的に新聞を読む環境が生まれるとともに、教師にとっても、新聞の効果的な教材化へのハードルがぐっと低くなる。そして、いわずもがな、そのような状況を実現させる核となる「人」が学校司書である。
学校司書は、学習センター、情報センターとしての役割の充実が一層求められるようになった学校図書館の運営リーダーであり、読書環境作りだけでなく、授業改善、NIE推進の一端を担う人材である。学校においてすべての子供たちに新聞等の活用が行き届くためのキーマンである。
その学校司書の取り組みに視点をあてて、分科会では次のような実践報告がなされた。
- 中津市立山口小学校(松本俊也教諭)
- 学校司書を研究組織に位置づけ、授業参観も日常的に行ってもらう
- 授業構想の段階から学校司書と相談して図書資料やNIE資料を精選していく
- 補充学習の時間「山口っ子タイム」に、2週間に一度NIEを位置づけ、学校司書がアドバイザーとして協力する
- NIEコーナーの設置や図書資料一覧表の作成も学校司書と協働して行う
- 中津市立東中津中学校(長松涼子教諭)
- 学校司書と連携した授業作りでは、必要な資料収集を司書に依頼することはもちろん、学習成果物の効果的な提示についても、学校図書館環境整備の一環として連携している
- 学校司書との連携を通して、新聞を読む生徒や必要な記事を探すために自ら図書館に足を運ぶ生徒が増えてきた
- 今後は、NIEを生徒の主体的な活動に変えていきたい
- 中津市学校司書研究協議会(市主催毎月1回の定例研究協議会)(北﨑佳百学校司書)
- 教師との連携を充実させ、学校図書館からNIE実践も効果的に広げるために三つの研究グループに分かれ、研究・実践・検証等を進めている
(1)教育課程研究グループ
教科、学年、単元に応じて常によりよい資料を提供できるように調査、研究に取り組む。「この単元には、この資料!」が一目でわかる「レファレンス集」を作成する
(2)連携強化グループ
学校司書同士はもちろん、公立図書館、学校の先生、ボランティアなどあらゆる機関との連携を考え、連絡ツールや方法を研究している。「学校司書ツール集」を作成する
(3)NIE研究グループ
学校図書館資料の一つである新聞を、児童・生徒や先生方によりよい方法で提供する視点で研究に取り組む。新聞閲覧コーナーや校内新聞掲示の工夫及びスクラップブックの作成などを日常的に行う。「NIE実践事例集①、②」を作成する
- 教師との連携を充実させ、学校図書館からNIE実践も効果的に広げるために三つの研究グループに分かれ、研究・実践・検証等を進めている
- 大分県立爽風館高等学校(志賀祐子主幹司書)
- 新聞の切り抜きは、入試対策のためだけではなく、生徒の主体的な学びや先生の授業作りにつながる。前任校では、20タイトル、年間50冊以上のスクラップブックを作成した。情報の選択、分類、整理、提供という作業は司書の仕事の極めて本質的な部分であるが、スクラップ作りはなによりも自分自身のためになった
- 今は、毎朝新聞をチェックし、生徒に読んでもらいたい記事を一つコピーして、一週間分掲示している。切り抜きも始めた。地味な作業だがいろいろな可能性をはらんでいるので面白い
これらの報告を受け全体協議では、
- 学校司書の組織的な取り組みに向けては、行政の支援が欠かせないこと
- 小、中、高の実態に応じた学校司書と教師との連携のあり方
- 著作権については、正しい知識を持って十分配慮することが必要なこと
などについて、意見が出された。
おわりに、今後の課題として2点提示する。1点目は、カリキュラムマネジメントの充実や組織的な授業改善の質の向上が求められる学校において、NIEが実効性のあるツールとして定着していくために、学校司書と教師との役割分担、および相互連携のあり方を改善することである。2点目は、学校司書と子供が連携することで、主体的にNIEに取り組む子供を育成することである。これらの課題が解決された先には、グローバル社会に臆することなく、主体的な情報活用者として生活を切り拓いていく力を身につけた子供たちの姿を思い描くのである。
【聴講者からの声】
- 「授業担当者が図書館と密に連携して活用している点を評価したい」(学校関係者)
- 「多くの学校に司書が配置されることを願っている」(学校関係者)