第21回NIE全国大会大分大会 特別分科会報告
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NIEのカリキュラム化
登壇者: | 富士見が丘幼稚園・今永真由美副主任 |
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大分市立寒田小学校・平山立哉教諭(NIEアドバイザー) | |
津久見市立第一中学校・永松芳恵主幹教諭(NIEアドバイザー) | |
司会: | 臼杵市教育委員会・安東憲雄指導主事 |
カリキュラム化で 学校全体で進めるNIEへ平山 立哉 NIEアドバイザー
大分県NIE実践研究会では、新聞そのものをどのように教材化し、教育活動に取り入れていけばよいか研究を進めてきた。そして、「NIEを授業ツールとして効果的に活用し、組織的に授業改善を進めていくための具体的な方策」「NIEに取り組む教員の拡大」が課題であるととらえている。この課題を解決していくため、「NIEのカリキュラム化」が有効と考え、NIE全国大会大分大会の特別分科会で、その実践を交流した。80人を超える参加者を迎え、それぞれの園・学校から、カリキュラム化に向けての実践発表がなされた。
富士見が丘幼稚園では、年少組で新聞紙を丸めたりちぎったりして形の変化を楽しんだり、年中組で新聞紙を使って遊んだり記事の写真に興味を持たせたり、年長組では新聞紙で立体的な造形活動を行わせたりしていた。発達段階に即し、新聞紙を使った多様な遊びを楽しみながら、新聞に対する興味関心を高める実践が行われていることがうかがわれた。
寒田小学校では、従来の研究組織を刷新して全職員が参加する「NIE推進部」を発足させ、NIEを学校全体で組織的に運営していた。実践を容易にするために、何年生の何月に何の教科でNIEに取り組めるかを一覧にした「NIE年間計画」を作成し、その加筆修正やパッケージ化を進めていた。児童が新聞に触れる機会を保障するために、週時程表を見直し、毎週金曜日の朝20分間に「NIEタイム」を創設したことなどが報告された。
臼杵北中学校では、NIEを授業ツールとして活用し、全教科・全領域で授業内容を深め、生徒同士の共感的な人間関係を育むため、さまざまな取り組みが行われていた。校内で「NIE実行委員会」を組織し、教職員全員による実践体制が構築された。まだ新聞になじめていない生徒が、調査・探求を行い、自分なりの考えを表現することができるまでの段階を示した「ステップ0・1・2・3・4」を作成し、系統的な指導がなされていた。さらに、各学年の各月に実践できる内容を一覧にした「NIE活用表」の作成と、その更新が行われていた。実践発表後、参加者から、主に四つの質問があった。
一つ目は「園児・児童・生徒が使う新聞は、どうやって手に入れたか」。富士見が丘幼稚園では、家庭で読み終わった新聞をもらったり、特別に使いたい記事があれば、新聞社に提供してもらったりしていた。寒田小学校では、保護者や教職員に古新聞を届けてもらったり、新聞社のデータベースにある記事を提供してもらったりしていた。臼杵北中学校では、上記の方法に加え、NIE実践指定校に提供された4社の新聞を一年間取りためておき、授業に活用していた。
二つ目の「全国大会が終わってもNIEを継続していくためには、どんなことが必要か」という質問に対し、各園・校からそれぞれ、園内・校内に実働化する組織を作ること、週に一度は確実にNIEに取り組ませる時間を確保するなどNIEの日常化を図ること、保護者や教育委員会の理解を得るため、NIEに取り組んだ成果を数値化するなど「見える化」を図ることなどがあげられた。
「NIEを推進するにあたって、園内・校内や外部からの反発はなかったか」との質問に、今永副主任は「幼児教育に新聞をどう使えばいいのか戸惑いはあったが、保育に効果的に活用できる方法はないかと前向きにとらえる職員が多かった」と答えた。平山からは「これまで取り組んだことがないことを始めるに当たって、大きな不安や戸惑いが生まれるのは当然。ときに担当者が強引に誘導し、職員を励ましながら理論研究や先行実践を学び合っていった結果、やってみようと試みる教師が現れ、その輪が広がっていった」と回答。永松教諭からは「NIEタイムや実践しやすい教科から無理なく始めることが肝要。加えて、管理職のバックアップと校内推進組織が不可欠だ」との考えが示された。
「NIEの実践に、どのようにメディアを活用しているか」との質問に対しては、今永副主任は「記事の提供を頼んだり、保護者の新聞づくりの様子を新聞紙面に載せてもらったりして、保護者に喜ばれた」と述べた。平山は「授業風景を取材してもらい、紙面に載せてもらったり、子供記者体験を通して記事の書き方を学ばせてもらった。大分合同新聞社主催の、NIEの楽しさや役立ったことを振り返る『NIE子ども会議』に卒業生を参加させてもらったり、記者に出前授業を依頼し、児童に効果的な紙面作りのコツを教えてもらったりもしている」と答えた。永松教諭からは「授業風景が紙面に載ったことをきっかけに、管理職がNIEの推進に積極的になり、学校全体で取り組めるようなバックアップにつながった」との発言があった。
活発な意見交換がなされ、3人の発表者が本分科会を振り返って「NIEを通して、一人一人の園児・児童・生徒を、全職員で育てていることを実感している。課題はまだまだ山積しているが、NIEのカリキュラム化を進めることで、その成長を保障していきたい」と締めくくった。
【聴講者からの声】
- 「実践の深まりが感じられた。この火が消えないように努めてほしい」(大学関係者)
- 「自分の学校でも取り組める実践が多くあった」(小学校教諭)