メディアリテラシーとは

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情報を伝える媒体が「メディア」です。「情報」にはさまざまな解釈がありますが、社会に出て生きる力を育む学校教育では、「考え・判断し・行動するために必要な知識・判断材料」とするのが適切でしょう。受け取る人の人生や社会的活動、世論形成に影響を与えることから、情報には公正さと正確性が求められ、メディアには社会的責任が伴います。しかし、インターネット、とくにSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の利用が広がる中で、メディア情報の公正さ・正確性・責任という価値が軽視される風潮があります。メディアリテラシーが重視される理由です。

フェイク(虚偽)とファクト(真実)

トランプ前米大統領は自分に批判的な新聞やテレビ報道を「フェイクニュース」と切り捨て、2020年の大統領選挙でも半数近い支持を得ました。

遡る01年、米国の憲法学者キャス・サンスティーン教授はネット上に情報があふれる状況を観察して「サイバーカスケード(Cyber Cascade)」を危惧しました。滝の水流のように、自分の感情や考え方に沿う情報に寄り集まる排他的なネット上の情報空間を意味します。なぜこのような現象が起きるのでしょう。多くの国で格差・分断が広がり、努力しても報われないという思いがうっ積し、事実を大切にするメディアよりも、自分と同じ考え・感情の人々が集まる仮想空間を居場所と考える人が増えたからと分析されています。不寛容な時代、深刻な社会状況だと言えます。

民主主義とメディアの役割・責任

メディアは何のためにあるのでしょうか。日本新聞協会(新聞101社、通信4社、放送22社が加盟)がよって立つ新聞倫理綱領は、民主主義社会を支える国民の知る権利に応えるために、「あらゆる権力からの独立」「正確・公正な記事と責任ある論評」「言論・表現の自由を守る」ことを明記しています。使命感に基づいて書かれているからこそ、新聞は全年代で他メディアと比べて最も高い7割近くの信頼度を得ている(総務省調査*1)と言えます。リーマンショック(08年)で世界が金融危機に見舞われ、新聞社、テレビ局の倒産・縮小が相次いだ際、米国の連邦通信委員会は「民主主義の危機」と警告しました。米メディアの権力監視機能が弱まり、高級官僚の給与が跳ね上がって選挙の投票率が低下する事態となったからです。

青少年のネット利用の内容は動画85%、ゲーム79%、コミュニケーション72%、音楽66%、ニュースは36%に過ぎません(内閣府調査*2)。子供が紙の新聞に触れる機会が少なくっている現状を踏まえて教師がしばしば語る「子供たちはスマホでニュースを見ている」は、実態を反映しているとは言えません。

インターネットは双方向性、だれでも発信できる自由さ、幅広く膨大な情報量、即時性、広汎性が特徴の画期的なメディアです。一方、匿名による誹謗・中傷、誤報・虚報が後を絶たず、責任の所在も不明確です。メディアの社会的責任には、責任の自覚と責任能力が欠かせません。

メディアの役割を理解し、各メディアの特性を知り、情報を批判的に評価して発信のモラルを身につけ、社会参画する力がメディアリテラシーです。そうした力を培う学校教育がますます大切な時代であり、NIEの役割は高まっています。

*1 総務省「令和元年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(20年公表)
*2 内閣府「令和2年度青少年のインターネット利用環境実態調査」(21年公表)

(赤池 幹・元日本新聞協会NIEコーディネーター)