米NAA財団総合調査

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新聞閲読の習慣導くNIE

NAA財団が初の総合調査
米国新聞協会財団(Newspaper Association of America Foundation)は04年9月、NIEの効果に関する初の総合調査「生涯読者を育てる(Growing Lifelong Readers)」の結果を発表した。そこで、財団のジム・アボット副理事長(=当時)に、調査結果を含めて米国のNIEの現状を報告してもらった。 調査の結果はNAA財団のサイトに掲載されている。

38万教室で新聞活用

NIEは、米国で長い歴史を持っている。公式のプログラムは、国際新聞販売責任者協会(ICMA)が1954年に実施した「教室に新聞を(NIC)」活動が最初とされる。米国新聞発行者協会(ANPA)財団は、56年にこの計画を引き継ぎ、92年に米国新聞協会(NAA)財団に名称を変更した。

当初ささやかな活動で出発したNIEは、発展し続けている。学校に新聞を提供するプログラムにより、新聞は、社会、算数、読解、英語、科学など数多くの教科の授業の一部として活用されている。多くの新聞社は、新聞購読の費用に充てるため、地元企業から基金を募っており、これにより学校では、特別の費用を負担する必要がない。

NIEの発展は目覚ましい。現在、NIEプログラムにより、10万5,000を超える学校に新聞が配達され、38万の教室で活用されている。2003年の1年間で、新聞は1,400万人の学生・生徒の手に渡った。米国でのNIE部数は、全国の発行部数の2.4%を占めており、年間で2億2,000万部となる。

読解力テストに好結果

米国でのNIEは、教育計画としてとらえられている。NAA財団が実施した調査では、学校の授業で新聞を活用する学生・生徒は、新聞を活用しない生徒より読解力の標準テストの成績が10%高いことが分かった。

また、英語を第一言語とせず、貧困の中で暮らしているマイノリティーの学生・生徒が、テストの成績で格段の進歩をとげていることも分かった。また、NIE授業の頻度は、テストの成績に重要な影響を与える。財団は、NIE活動のうち1年間に最低35週、週1回の頻度で、学生・生徒に新聞が届けられる計画をインテンス・プログラムと定義した。中学校(学齢13歳から15歳)のマイノリティーの生徒で、年間を通じて少なくとも週1回、新聞を活用する生徒は、新聞を活用しない生徒に比べ、29%も標準テストの結果がいいことが分かった。

新聞が、米国の学生・生徒の教育に極めて肯定的な影響を与えているのは明白だ。

社会への関心広がる

昨年(04年)9月に公表された新しい調査は、少年・少女期の新聞閲読と、彼らが若年の大人となった時点での定期的新聞閲読との間に相関関係が成立するかを調べる目的で実施された。

独立の調査会社が18歳から34歳の若年の大人1,500人を無作為抽出し調査した。調査対象者は、学校で新聞を活用したかどうかの質問を受けた。

調査結果は、非常に興味深いものとなった。現在、新聞を閲読している若年の大人の62%が、小学校、中学校、高校で頻繁に新聞を活用したことを記憶していた(学齢13歳から18歳)。現在新聞を閲読していない若年の大人に同様の質問をしたところ、学校で新聞を活用した記憶があるのは、わずか38%だった。

この結果は、学校での生徒に対する新聞の活用が、若年の大人となった時、定期的な新聞読者になるかどうかの決定に重要な影響を与えていることを示唆している。

ほかの要因ではなく新聞の活用が、新聞の閲読を導いているのかをはっきりとさせるため、両親の学歴、家庭に新聞がある環境で育ったか、家庭で新聞を話題と したか、世帯の収入など、さまざまな要因を取り除いても結果は不変だった。

学校で新聞を活用した人は、ほかの要因のいかんを問わず将来の新聞読者となる。 両親が新聞を読むかどうかも、将来、新聞読者になるかを占う主要な要因となる。

調査からは、いくつもの興味深い内容が読み取れる。若年の大人の多数は、新聞を読み始めた年齢を13歳としている。これほど早い時期から子供の生活で、メディア利用のパターンの形成が見いだされるとは予測していなかった。

若年の大人が、地域広告と地域の娯楽情報から新聞に目を向けることも知った。新聞を地域情報の優先的な情報源として選択した数は、テレビ、ラジオ、インターネットの合計より多かった。

授業で新聞を活用した学生・生徒は、地域、国、国際ニュースにより興味を示す。また、プロスポーツのチームに関心を持つようになる傾向も強い。

学生・生徒の多数は、中学校・高校時代に生徒が制作した新聞を手にしたことを記憶していた。学校新聞の質も、将来の新聞読者にある程度影響を与えることが明らかになった。

米国におけるNIE活動は、非常に多くの数の新聞を学校にとどけ、新聞が重要な教育効果を生み、将来の読者へと導いている。

06年に初の若年読者会議

NAA財団は、毎年2つの大規模な会議の主催者となっている。1つはNIE計画のためのもので、もう1つは、若者向けページ編集連合(10代の生徒たちが執筆するなど特別の若者ページの制作を担当する編集者の集まり)のために開催されている。この2つの会議は、06年に統合され、第1回目のNAA財団若年読者会議が開催される。この会議は、学生・生徒を担当する新聞社のすべての人が一緒に参加する会議となる。2つの会議の参加者は、同じ学生グループに関する仕事をしており、お互いに助け合うのが合理的だからである。会議は06年の6月21日から25日にかけてミズーリ州のセントルイスで開催の予定である。

07年に米国は、隔年で開催される世界新聞協会(WAN=World Association of Newspapers)の若者読者会議の開催国となる。会議は、07年の3月24日から28日までワシントンで開催され、数か国語の翻訳サービスが提供される予定となっている。05年の会議はアルゼンチンのブエノスアイレスで9月18日から21日まで開催される。