実践指定校実践例 2012年度

新聞記事を選んで、読んで、自分の意見を書く3つの試み

大田区立大森東中学校(おおたくりつおおもりひがしちゅうがっこう)

教科、科目、領域

中学校: 公民
学年 中学 3年
私たちと現代社会
現代社会の抱える身近な問題について、自分の意見を表現できる生徒を育てる。
生徒一人ひとりが新聞を1ページずつめくって目的の記事を探す。
新聞活用学習

(1)スクラップ帳を作り,社会的事象に対する関心を高め、理解を深める。(6時間)
(2)記事についての自分の考えをまとめて、投稿する疑似体験をする。(2)
(3)班で、テーマを考え、関連記事を集める。協力してキャッチコピーを考え、テーマに関する意見を書く。(2)
(数字は授業時数。放課後や家庭での学習時間は含んでいない。)

第10時

(1)の実践内容
1学期、新聞記事を丁寧に読んで理解するために、教師側で テーマを設定してワークシートを使用した学習を実施。ワークシートの記述内容は、1.新聞名と日付、2.語句の意味調べ、3.分かったこと(記事の内容、要約)をまとめる、4.自分の考え(300字程度にまとめる)、5.友達の意見や感想
[テーマ]5月:最も関心をもった記事、6月:環境問題に関する記事、7月:人権侵害に関する記事
(2)の実践内容
・自分でテーマを設定し、それに関する記事を5つ集めてスクラップ帳に貼る。
・5つの記事を読んでわかったことをスクラップ帳に書いて内容を理解する。
・テーマに関する自分の意見を600字程度にまとめる。(投稿の疑似体験をする。)
 [生徒が設定したテーマ]領土、いじめ、原発関連、地域紛争、オスプレイ、食料、虐待、水俣病、環境、人権、iPS細胞の森口教授の事件など
(3)の実践内容(グループ学習)
・班でテーマを決める。
・テーマに関する記事を10枚集める。
・語句の意味を調べながら記事を読む。
・テーマに関するキャッチコピーを考える。
・記事を模造紙に貼る。
・班で話し合って自分たちの意見をまとめる。
〔班で設定したテーマ〕
原発関連、消費税増税、憲法第9条、総選挙、少子高齢社会、人権、ノーベル賞、トンネル崩落事故、北朝鮮ミサイル問題、イランの内戦、領土問題、災害

 1学期から隙間時間を活用して新聞を読むという学習活動をできるだけ多く実施する。教室で新聞を手にとる、1ページずつめくって目的の記事を探す、語句の意味を調べながら丁寧に読む、記事に書いてある事実と自分の考えを区別して意見を書くという作業を繰り返し実施した。意見は300字をめやすに記述することとした。

 最初は新聞を読むことに抵抗を感じていた生徒が多かったが、公民の授業で学んだことが新聞に取り上げられていることを知るにつれ、興味を持って読むようになった。また、意見を書くことにも慣れていき、300字程度の文章が書けるようになった自分に驚いている生徒も多かった。

 インターネットの情報に偏りがちな生徒の実態を考えると、新聞という新しい情報源を知ったこと自体に意味がある。語句の意味を調べながらじっくり読むことによって、自分の力で学ぶという体験をすることができた。また、社会事象に対する関心を高め、意見を書くことに慣れてきた。
 課題は、コミュニケーションの不足だ。個別学習で終わらないように、自分の意見を友達に読んでもらったり、グループ学習を取り入れたりしたが、議論し、発表するという過程を入れることができなかった。また、記事内容を深く理解するためには、辞典・事典や地図、年鑑などの「参考図書」の使い方を覚えることが必要だ。初歩的なことではあるが、読めない漢字は漢和辞典を引いて調べるようにするなど、基本的な学習の仕方を学ばせたい。

実践者名:大田区立大森東中学校 小石都志子