実践指定校実践例 2012年度

思考力・判断力・表現力を育てるNIE活動の創造

海陽町立宍喰小学校(かいようちょうりつししくいしょうがっこう)

教科、科目、領域

小学校: 総合学習
学年 小学 5年
命を守る防災プロジェクト
南海地震に関する新聞記事や校区内の避難経路や避難施設の調査を通して,地震・津波発生時に自分は何をすべきかについて考えを深める。
過去の南海地震の被害の様子や体験者の体験談などかが掲載された新聞記事を読み,自分たちの地域の避難施設や避難経路を確認する調査活動に発展させる。
新聞制作学習 新聞活用学習

(1)過去の南海地震について知ろう 5時間
  地域に残された地震・津波碑や過去の南海地震を特集した新聞記事を読む。
(2)地域の防災マップを作ろう  15時間
  校区内の地震・津波避難施設や避難経路について調べ,防災マップを作成する。
(3)『震潮記』から学ぼう 5時間
  過去宍喰を襲った地震や津波について先人が残した記録『震潮記』を読む。
(4)防災新聞を作ろう 10時間
  防災に関する新聞記事から見出しや文章構成について学び,防災新聞を作る。

第1~7/10時

(1)防災新聞を通して地域の人や全校児童に伝えたいことは何かについて話し合い,宍喰小学校の避難場所紹介と避難訓練の様子,防災マップの紹介と避難の際の留意点,昭和南海地震体験者の体験談,『震潮記』の教え,の4つのテーマに絞り,各グループごとに新聞のタイトルを決めた。
(2)グループ内で各テーマの担当者を決めた後,防災関連の新聞記事を切り抜き,見出しや段落構成,表現など,記事の特徴をつかんだ。続いて具体的な記事を取り上げ,新聞記事の逆三角形構成や5W1Hの要素について理解した。1段落目に<いつ・どこで・だれが・何を・なぜ・どうした>を,2段落目に<取り上げた事物についての詳細>を,3段落目に<インタビューや記者としての感想など>を簡潔に書くよう指導した。
(3)紙面構成,見出し・わき見出しについて話し合い,新聞紙面を完成させた。互いの紙面を読み合った児童は,「紙面が限られているので,本当に伝えたいことは何か何度も考えて,必要な情報だけを選ぶようにした」「見出しを考えるのは難しかったけれど,『迷わず逃げろ』『命以上の宝はない』と短い言葉で,自分達の思いを伝えられた」等,意見や感想を交流し合っていた。

地震発生時には最悪の場合6分以内に最大で20m近くの津波が町を襲うであろうと予測されている地域に位置する学校である。地元新聞に頻繁に掲載される町の防災体制や防災施設などに関する記事は,児童にとって自分の命にかかわる情報である。そのような意識を持ち,日頃から防災に関する新聞記事をスクラップし,クラス全体で読み合うことを続けることと並行して,本単元に取り組んだ。

防災新聞を作る過程では,情報を取捨選択し,言葉を選び,構成を考えるなど,児童の思考力や判断力,表現力の高まりを特に強くうかがうことができた。また,グループで互いの見出しや記事について意見を交わす中で,自分と異なるものの見方や考え方を知り,よいと思ったり納得したりした他者の考えを自分の考えに取り入れるなど,他者理解やコミュニケーションの力の高まりもみることができた。
  

本実践では,「南海地震とそれに伴って発生する津波から,自分や家族の命をどう守るのか」という切実な課題に対して,「防災マップや防災新聞を作成し,他に発信することで自他の防災意識を高めること」をゴールに設定した。そして,課題追究過程を充実させるため,避難所や避難施設の確認,南海地震体験者の話を聞くなどの体験活動,地震の記録資料を調べる活動などに新聞記事を活用しながら取り組んだ。情報を収集・整理し,既習の知識や経験と結び付けることを通して自分の考えを明確にしたり表現したりする際,新聞記事は非常に有効であった。さらに,友達と考えを交流する際,自らの考えの根拠としたり,自他の考えの比較判断材料としたりすることもできた。学習成果をまとめる方法としても,新聞という形式は効果的であった。

実践者名:海陽町立宍喰小学校 上原小代子