実践指定校実践例 2012年度

PISA型読解力の向上をめざした新聞活用法の研究

福岡県立筑紫高等学校(ふくおかけんりつちくしこうとうがっこう)

教科、科目、領域

高校(高等専門学校を含む): 特別活動
学年 高校(高等専門学校を含む) 2年
言霊(新聞社説を活用したプリント学習)
思考力・判断力・表現力の向上
論理的な文章を読み、要約したり、理由や根拠を示して自分の意見を書く。
新聞活用学習

毎朝の始業前の10分間の読書の時間を活用して、プリント学習を実施した。

第19時

1.社説の要約
(1)社説を印刷したプリント(「言霊」と命名)を読む。
(2)重要な箇所にアンダーラインを引く。
(3)社説の内容を90字から100字で要約する。
(4)不明な言葉の意味を電子辞書で調べる。

2.社説への意見書き
(1)社説を印刷したプリントを読む。
(2)筆者の意見に賛成か反対かを表明する。
(3)140字から160字で、理由や意見を付して、自分の意見を書く。

※4回シリーズのモデル
   指導者の準備:意見が対立する2紙を選択してプリント化
   →第1回:A紙の要約→第2回:B紙の要約
   →第3回:A紙への意見書き→第4回:B紙への意見書き

(1)字数制限を守らせる。
(2)時間制限を守らせる。
(3)意見の対立を意識させ、対立した意見のどちらに賛成し、どちらに反対するかを判断させる。
(4)感情的な意見にならないように戒め、論理的思考力を発揮するように促す。
(5)要約の段階で情報が足りない場合は、他の新聞・書籍・インターネットを活用して、情報を補充させる。
(6)意味がわからない語彙や表現は電子辞書等で調べさせる。

 当初は「社説は難しい」という反応が強かったが、毎日継続する中で、半年経過する頃には、ほとんどの生徒が楽に要約できるようになった。その結果、この活動の意義を実感できるようになり、抵抗感が薄らいだ。
 意見を書き始めた頃は、批判的に読む事が出来ず、どんな意見にも賛成する生徒が多かったが、対立する二つの社説を読み比べる事で、自分で考える習慣が身に付き、次第に批判的な意見が書けるようになった。

 6割の生徒が、思考力・判断力・表現力の向上を実感できた事が確認できた。又、そのために役だった活動として、7割の生徒が毎朝のプリント学習を挙げた。題材が新聞の社説であったので、日々の世界の動きを肌身に感じ、自分の生き方や社会の在り方について真剣に考える生徒が増加するという成果もアンケート調査で確認できた。
 今後の課題としては、全学年の取り組みとして広げるとともに、総合的な学習の時間を活用して、10分間では出来ない、より深めた「言霊」学習を追求していきたい。社説だけではなく、書評等も活用して、幅の広い言語活動を展開したい。又、家庭で新聞を読む時間がほとんど増加していないという実態もあるので、保護者の方に新聞学習の意義を広報し、家庭でのファミリー・フォーカスを促していきたい。

実践者名:福岡県立筑紫高等学校 矢加部 彰