ミニディスカッション NIE・こどもから大人まで~島根からの提案

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実践発表 松浦和之氏 (島根県平田市立檜山小学校教諭)
司会 有馬毅一郎氏 (島根県NIE推進協議会会長)
発言者 枝元一三氏 (大阪NIE推進協議会事務局長)
勝部良子氏 (島根県広瀬町立上山佐児童館教諭)
山尾一郎氏 (島根県大東町立海潮中学校教諭)

学校にとどまらず、家庭や地域で実践するNIEを提唱した全体集会Iは、中学校と隣接した島根県の小学校の先生の実践発表と、児童館(保育所)、中学校の先生らを加えたミニディスカッションで構成された。こどもたちの生きる力をはぐくむNIEは――島根からの提案を報告する。

縦(生涯の流れ)と横(学び方の広がり)の
両方を広げていくことで「生きる力」が
はぐくまれると考える(図1)。

松浦 島根県ではNIEを生きる力をはぐくむ生涯学習ととらえており、二つのキーワードがある。まず一つめは「こどもから大人まで」だ。幼児から大人までの生涯を通したNIEを考えている。それぞれの校種でどのような実践が行われているかを情報交換し合うことで、発達段階に応じた適切な新聞とのかかわりが明確になると考える。

二つめは「家庭・地域との連携」だ。学校だけでなく、実社会とのかかわりを持たせることで、自分の考えを深めさせたい。学校と家庭・地域が双方向の関係を持つことで、学校でのNIEがより効果的になることが期待できる。

有馬 島根県提案の感想を聞かせてほしい。

枝元 現在のNIEはやや行き詰まっている印象があるが、今回の提案は今後の発展を図るうえで非常に参考になる。アメリカでは、保育所・幼稚園でのNIEが積極的に行われている。学校種の連携についても大都市圏であっても幼・小・中は限られた地域の中にあり、教員間の連携は図りやすいだろう。「総合的な学習の時間」ができ、地域との連携がとりやすくなった。授業参観などを利用することもいい。ファミリーフォーカスも有効な手段だ。

新聞は楽しい遊びの教材

有馬 幼少期でのNIEのねらいについて聞かせてほしい。

勝部 幼児は新聞紙という素材に出合うことから始まる。新聞をちぎる、割くといった感覚での遊びを大切に考えている。自分の興味・関心次第で色々なものを新聞紙面から発見できるのが、一番の良さだと思う。新聞は楽しい遊びの教材だ。

一例をあげると、車の広告などをいつも見ている3歳の車好きの子どもが、交通事故の写真を見て、「この車はどうして壊れているのか」「乗っている人はどうなったのか」などを聞いてきた。小さな交通事故の写真からも子どもたちは、何かを感じ、しっかりと会話することができた。

新聞は創造性をふくらませ、幼児期に一番大切な感性、感受性を養うのに役立つ。

有馬 学校種、家庭・地域とのかかわりについてはどうか。

松浦 以前の全国大会で、NIEは楽しいものだとほかの教師にPRすることが大事だと聞いた。私も中学校の職員室によく出向き、NIEについて話題にした。こうした気軽な会話の中から仲間が増えていき、情報交換することでNIEの質も高まった。

親子で意見を述べ合う

山尾 NIEが定着してくると、子どもたちが家で「新聞を読むようになった」「子どもから新聞記事について聞かれるようになった」という声を保護者から聞くようになった。

保護者参観日に「社会の一員として」というテーマで、気になった記事を親子で述べ合う授業をした。自分の意見を言い合うことで、互いの考えを分かり合えたと好評だった。

枝元 小・中・高校では教師間のネットワークが広がり、実践内容の情報交換が行われている地域も増えてきている。しかし、校種間でのすみ分け、系統化はまだ十分に研究が進んでいない。先ほど、NIEは停滞しているといったが、実践者の先生は非常に熱心で、NIEの質は高まっている。さらに高めるためには、(1)研究会を活発にする(2)適切な助言者を求める(3)NIEを理論化するの3つが考えられる。

楽しく学ぶ姿を見せる

松浦 家庭や地域の人に、子どもたちがNIEで楽しく学んでいる姿を見てもらうのが大事だ。子どもたちは楽しい授業を受けたり、新しい発見をすると家族に報告するだろう。そうした家族の理解を得やすい方法を教師側が意図的に組むことも重要だ。

山尾 社会とのかかわりでいうと、新聞投稿などの「情報発信型NIE」には、実社会からリアクションがある。そこで生徒は一度立ち止まって、自分たちは何をしたらいいかを考え、実践力を高めてくれた。

教職課程にNIEを

枝元 大学でのNIEをもっと活発にしたい。特に教職課程の必修科目である「教育方法」にNIEを組み入れたい。また、地域社会に広めるため、地域のカルチャーセンターなどで、新聞社、学校、新聞販売店が協力して、NIEの講座を作るべきだ。提案は非常に具体的かつ実践的で、生涯学習型のNIEに一つの示唆を与えてくれた。

有馬 今後はNIEによって育成された能力が将来、どのように生かされていくのかという広い視点での研究が必要だろう。NIEは教室の中だけなく、家庭・地域と自然な形で連携していけると相乗効果を持つ。このようにすそ野の広いNIEの実践を深め、高めていきたい。