第21回NIE全国大会大分大会 特別分科会報告

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行政との連携で進めるNIE

登壇者: 沖縄県立総合教育センター教育経営研修班・甲斐崇研究主事(NIEアドバイザー)
東京都北区教育委員会・清水みさ指導主事
大分大学COC+推進機構推進コーディネーター(統括)・梶原敏明氏
司会: 大分県教育センター・佐田香織指導主事

行政から発信するNIEの教育効果 保護者や管理職へのアピールでさらなる広がりを
甲斐 崇 NIEアドバイザー

 分科会では、甲斐崇沖縄県立総合教育センター研究主事、清水みさ東京都北区教育委員会指導主事、梶原敏明大分大学COC+推進機構統括コーディネーターの3人がNIEを推進させるための行政の取り組みを、それぞれの実践や立場を踏まえて報告した。

 甲斐は、2013年度よりNIE担当主事として同センターに赴任。出前講座を中心に、児童生徒や教職員の校内研修を参加型・ワークショップ形式を重視して行っている。出前講座は昨年までの3年間で60回あまり、約2,200人が受講した。また小中学校や高校の初任者や10年経験者研修などの経年研修にもNIE講座を実施しており、新聞活用の意義や日常的な活用の仕方などを紹介している。調査研究事業でもNIEの効果を検証し、新聞を活用したキャリア教育の実践が、児童に地域や社会への関心や、学ぶ意欲の向上をもたらしていると述べた。

 清水氏は、「新聞大好きプロジェクト」を紹介した。区立小中学校全48校に、同区新聞販売同業組合の協力を得て、学校の希望数の新聞を手配。各学校には同プロジェクト推進委員を置き、教員研修や経年研修を実施している。また「比べて読もう新聞コンクール」等も主催しており、区内の全学校が参加している。7年目の取り組みでNIEが学校に根付いてきており、児童生徒の地域や社会への関心が高まり、書くことへの抵抗感が減ってくるなどの効果が出ていると述べた。

 梶原氏は、キャリア教育の視点からも子供たちが社会に関心を持つことは大切であることや、日々変化する社会や地域の情勢には、全国一律の教科書だけでは対応できないこと、新聞から学べるところが大きいことを指摘した。日々の業務に忙しい先生方に代わり、行政が校長などの管理職への啓発に力を入れ、校長が校内全体でNIEに取り組んだり、教員向けの授業作りの支援を行ったりすることで、NIEが効果的に広がると述べた。

 3人の発表を通して、改めて新聞活用が児童生徒の社会への興味関心や学びの質を高めることにつながると再確認できた。行政が取り組む視点としては、その成果をきちんと各学校や保護者、地域等に発信することも大切だと感じた。いわゆる成果の「見える化」の発信である。質疑応答の中でもフロアから、研修を受けた教師がどのようにNIEの授業を行い、その結果として児童生徒にどのような力がついたかを事後調査する必要性があるのではないかという意見が出ていた。NIEの効果を発信することは行政にとっても喫緊の課題であろう。

 また、NIEの取り組みが広がらない原因としてよく言われることとして、新聞が確保できない、やってみたいがどのようにすれば分からない、児童生徒に活用させたいが難しい、などがあるが、今回の分科会では、その解決策も提起されたと考える。

 一つ目は、行政が主導して新聞社や販売店と連携して新聞を確保することである。予算の確保を含め計画的な配布や、新聞確保のためのアイデアを示すことが求められる。

 二つ目は、経年研修や任意研修において先生方がNIEの手法を学べる場を提供したり、学校内に活用に向けての担当を配置したりすることである。特に悉皆(しっかい)研修である経年研修で、NIEの講座を開く意義は大きい。また、校内での実践推進リーダーも必要不可欠である。

 三つ目は、教師の指導によって学んだ児童生徒が学びの成果を発揮する場を設けることである。これも成果の「見える化」である。各地区や各新聞社が主催するコンクールへの応募、児童生徒が取材してまとめる新聞作りや、日常的な投書に積極的に取り組み、それを紙面化・記事化してもらう効果は何よりも大きいと考える。NIEで育った児童生徒の姿をアピールすることこそが、新聞活用の意義をストレートに伝えることになるだろう。

 今回の特別分科会において提起・討議されたこれらの実践を、行政が主体的に計画し、コーディネートすること、そして、それぞれの地域において、できるところから実践していくことが、NIEの広がりにつながっていくと期待したい。

【聴講者からの声】

  • 「教育委員会幹部や校長ら管理職を巻き込み、組織的に取り組むことが、NIE推進の核であると再認識した」(新聞社社員ほか)
  • 「行政の視点からとらえたNIEを知ることで、NIEの社会的意義を再確認できた」(中学校教諭)