第18回NIE全国大会(静岡)

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広げよう「NIEタイム」 全国大会で特別分科会 日常化の「切り札」に

分科会でコーディネーターを務める筆者(中央)=7月26日、静岡市

静岡市で開かれた第18回NIE全国大会で、特別分科会の一つとして「朝の時間に新聞を―NIEタイムの試み」が開催された。NIEの日常化という大きな課題に対する「切り札」と目される取り組みへの反響は大きく、事前の申し込み70人を超える参加者が会場に押し寄せ、用意した120部の資料は瞬く間になくなった。

全国で50校超が実施

正規の授業が始まる前の朝の10~15分の時間帯に新聞を読む活動を、「NIEタイム」の名称の下、全校教育計画の中に位置付けて展開したのは、おそらく東京の北区立王子第三小学校が最初ではないかと思われる。その後いわば自然発生的に全国へ広がっていった。呼び名も「新聞タイム」「朝新聞」「朝ニイ」「新聞の時間」などさまざまである。分科会準備の過程で調べたところ、少なくとも50校を超える小・中・高校で実施されている。部分的な実施を含めれば、おそらく全国で100校を超えているのではないか。この活動は、NIE実践指定校だけでなく普通の学校でも容易に取り組めるところに大きな意味がある。定着すれば、実践校でなくなったり先進的な実践者が異動したりしてNIEの火が消えてしまうというような状況の改善にも役立つだろう。

分科会では、関口修司氏(元王子第三小校長)の基調提案を踏まえ、小学校(京都)・中学校(静岡)・高校(東京)の教師が実践状況を報告した。いずれも示唆に富む内容で、参加者の共感を呼んだ。報告を通して明らかになった「NIEタイムの良さ」として▽学校ぐるみでも学年でも学級単位でも取り組める活動である▽特別な準備や指導計画、指導技術を必要としない▽その気になれば、明日からでも始められる▽労少なくして学習効果が大きい。子供にとっても教師にとっても手応えがある―の4点が挙げられる。

教師への研修も課題

一方、分科会や各地から寄せられた紙上報告を通して、課題も明らかになってきた。

  1. 新聞をどう確保するか
  2. この活動では子供全員が1人1紙、丸ごとの新聞を手にすることが望ましい。「教材費として家庭から徴収し教材用価格で購入している」「各自自宅から持参。購読していない家庭の子には学校でストックしておいた新聞を渡す」「協力的な家庭や教職員、地域の有志などによって提供される古新聞を〝かき集めて〝使っている」「教育委員会が予算措置をしてくれている」「“すべての教室へ新聞を”運動をしている販売所の支援によって新聞を入れてもらっている」など、さまざまな工夫がなされている。
  3. 「子供の自主的活動」と「教師の意図的指導」の折り合いをどう付けるか 活動のアイデアの基になった「朝読書」と同じように、子供たちが自分の興味関心に応じて自由に新聞を読みスクラップすることなどが基本である。一方、教師の自作あるいは新聞社提供の「ワークシート」を用い、「課題」を与える実践も少なくない。また、あるテーマを定めた上で子供が自由に記事を選ぶというやり方もある。どちらかが絶対とか望ましいとかでなく、バランスが必要だろう。
  4. 教師向けの研修をどうするか 活動の前提として「新聞とは」「新聞の読み方」などの事前指導があることが望ましい。初歩的な知識で十分だが、それでも教師には指導方法を身に着けてもらいたい。1~2時間コースの研修プログラムがあるとよいだろう。
  5. どうすれば高校への普及が図れるか NIE全体もそうであるが、NIEタイムも小学校での実践が多く、ついで中学校。高校ではなかなか取り入れられていない現状がある。

大会の前後には、複数の新聞の社説やコラムでNIEタイムのことが取り上げられた。論議をより深めるため、次回大会での継続開催を求める声も出た。今後の展開を期待したい。

新聞協会NIEコーディネーター 吉成勝好