第12回NIE全国大会(岡山)

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NIEの魅力再発見~新聞を通して見えてきたもの

第12回NIE全国大会は7月26、27の両日、岡山市の岡山コンベンションセンター(ママカリフォーラム)で開かれ、44都道府県から学校・新聞関係者ら約850人が参加した。「学びあい 世界を広げるNIE(教育に新聞を)」をスローガンに、1日目のパネルディスカッションでは、「NIEの魅力再発見―新聞を通して見えてきたもの」をテーマに、学校現場、新聞社それぞれの立場からNIEの魅力と課題について話し合った。

パネリスト 廣田 巨史氏 倉敷市立倉敷西小学校教諭
横田 真智子氏 倉敷市立倉敷第一中学校教頭
冨谷 貴紀氏 岡山県立岡山城東高等学校2年
前田 敦子氏 岡山県総合教育センター指導主事
影山 美幸氏 山陽新聞社編集局記者
コーディネーター

森川直氏 岡山大学教育学部教授(岡山県NIE推進協議会会長)

パネルディスカッション

新聞で社会とのつながり自覚

森川 NIEは、型にはまりやすい学校の授業を活性化できるものと期待している。初めにそれぞれの立場から、NIEの魅力と課題についてお話しいただきたい。

廣田 03年に実践校となって以来、NIE活動を続けている。子どもと地域社会との接点がなくなってきており、学校が意図的に地域と触れ合う行事を組んでいる。新聞に触れさせることは、子どもが世の中を知る入り口となる。

新聞は、読むことを通して他者を知り、自分と向き合うことができるが、インターネットやテレビが伝える情報の多くは、画面を通して入ってくる一過性のものだ。

ただし、新聞は発達段階に応じて活用しないといけない。低学年は気に入った写真の切り抜きをさせ、中学年では子ども向けページを読み合い、国語の単元「新聞記者になろう」では実際に記者をゲストとして呼んだりしている。高学年の社会では、テーマに応じて記事を切り抜いたり、国語の授業で記事体の文章を書かせるなどしている。

子どもたちは必然性があれば、新聞でも本でも一生懸命読むようになる。だから、新聞当番を決めてスクラップノートを作らせたり、教室や図書室にNIEコーナーを設けたり授業以外でも工夫している。

残念ながら教師の教材研究において、NIEの優先順位は低い。だからこそNIE担当者だけの活動にしないことが大切だ。NIEを広げるために、公開授業や他校の教師も集まる研究会などでNIEをPRするのも効果的だろう。

森川 管理職の立場から話をうかがいたい。

横田 前任校の倉敷市立真備中学校では、「ことばの力の育成」を重視し、その手だてとしてNIEを活用した。教頭として、研究実践に向けての環境づくりを心がけ、「無理なくできるNIE」を合い言葉に始めた。

新聞はタイムリーに情報を提供してくれる生きた教材であり、自分と社会とのつながりも意識できるようになる。子どもは、新聞を読むことで世の中の出来事を自分と結びつけて考えることができるようになる。現在の倉敷市立第一中学校は、NIE実践校の経験があるので、新聞を授業で生かす取り組みがすでに定着している。

気になるのは、教員が忙しすぎて、新聞を読む時間がないことだ。

記者派遣 三つの効用

冨谷  小学生のころ、地域でしめ飾りを作る機会があり、その時に新聞記者から取材を受けた。

自分のコメントが新聞に載ったことがうれしくて、それ以来新聞を身近に感じるようになった。

学校で新聞を読んで感想を書く課題が出たので、エルニーニョ現象の記事を選び、調べてみるとどんどん興味が広がっていった。新聞を読んで、テレビのニュースがすべてではないんだ、と改めて実感した。新聞は自分のペースで読むことができるところも良いと思う。

前田 小学校から高校までの教員を対象に、教科を問わず本・新聞など活字メディアを活用する授業づくりの研修講座を、05年度から実施している。研修を受けた教員からは、「新聞記者から新聞活用について助言いただいたので、授業づくりについて考えることができてよかった」などの感想が寄せられた。授業で活字メディアを活用することは、国語力、読解力の向上、読書習慣の確立につながる。

今後は、学校図書館の学習・情報・読書センターとしての機能をいかに活用していくか、また司書教諭・公立図書館との連携が課題となる。

影山 教育現場の取材のほか講師としても学校に行くことがあるが、取材に警戒する学校現場が、講師で行くと歓迎してくれる。その対応の違いに驚くこともあったが、NIEは子どもをはぐくむという共通の目的に向けて先生と一緒にできることが良い点だ。

新聞記者による授業は大きく分けて二つある。政治や環境問題など、担当するテーマについて解説するものと記者の仕事についてエピソードを交えて話す場合だ。  新聞記者が学校に派遣されることには三つの効用がある。まず、学校に外部の風を入れることができる点だ。記者が行くだけで子どもの目が輝き、学習意欲が高まるのが見て取れて、うれしい。二つ目は、新聞(情報)の向こうに送り手である人間がいるのを実感してもらえること。これはメディアリテラシーにもつながっていく。そして、三つ目は記者自身も多いに学べることだ。

NIEを広めるには

森川 NIEが抱える課題について、議論を深めていきたい。

廣田 ある地元中学校の先生から「倉敷西小の子どもは文章のまとめ方がうまいが、どのような指導をしているのか」と質問されたことがある。その先生は小学校でNIEを実践しているのを知らず、中学校との連携不足を痛感した。

横田 前任校では小学校との連携を考え、情報交換する場を設けた。中学校のNIE担当教師が小学校で授業したこともあり、こうした連携を深めていけば、小学校で学んだ内容を中学校でも生かせるだろう。

前田 新聞社と学校の連携についてはどうだろうか。新聞社による研修や学校への支援などはあるのか。

影山 これまで新聞社は先生の専門領域には触れないようにしてきたが、今後は授業の質を向上させるためにも、相互のコミュニケーションが大事になるだろう。

森川 会場からも質問や意見をいただきたい。

フロア NIEを実践するうえで学校の管理職や教育センターが果たす役割の大きさを実感している。山口県では校長が主導して学校全体でNIEを進めている例があるが、岡山県ではどうか。

廣田 学校長のきちんとした理解も必要だが、まずは教員の連携が大切だ。

森川 岡山大学教育学部では学生を県内のNIE実践校に派遣している。すると校長自らがNIEについて学生に説明してくれると聞く。岡山では管理職の理解も進んできたな、と感じているところだ。

フロア 教員の研修講座は大切だが、NIEを広めるには管理職対象の講座も重要だろう。岡山にはそうした講座はあるのか。

前田 現在のところ管理職を対象とした研修はない。NIEの研修を受けた先生やこのような大会に参加している先生が、数年経てば管理職になるので、教員のネットワークづくりが大切だ。

NIEからNILへ

森川 最後にNIEについて夢を語ってほしい。

影山 学校現場を取材して「地域の子どもは地域で育てる」との声を聞き、共感する。地方紙の記者として、「岡山の子どもたちを岡山で育てる」活動に、NIEを通じてかかわっていきたい。

前田 常にアンテナを張って、先生の要望に応えていきたい。センターとしての機能を果たせるようがんばりたい。

冨谷 新聞は、様々な量の情報が一目で分かるのが魅力だ。読んでいると、何に興味があるのかが自分で分かってくる。進路選択の参考にもしたい。

横田 赴任した先のPTA連合会で、新聞記事を持ち寄って会合をしたら話題が広がった。地域とのつながりのなかでも、新聞を上手に活用できればよいと思う。

廣田 新聞は私にとって様々な出会いの場だ。重松さんも講演で言っていたが、NIEが“NIL(ニュースペーパー・イン・ライフ)”になるように、生涯学習のひとつの手段になっていけばよいと思う。